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「スーパー糖質制限食に発ガンのリスク」というエビデンスはない
こんにちは。

ざとさんから、ハーバード大学の研究者が「Annals of Internal medicine」に2010年に論文発表したコホート研究について、コメント・質問をいただきました。

確かに発ガンリスクに関して、上記論文を根拠として灰本先生が

「30%未満の糖質制限食を数十年にわたって続けるとかえって危険なのです」

と看護ジャーナル1月号ににコメントを述べておられますね。

結論から言うと、このコメントには大きな誤解があります。

まずこの論文には、30%未満の糖質制限食をしたグループは、登場していません。

この論文はあくまでも、総摂取エネルギーの35.2~42.8%を、炭水化物から摂取しているグループにおける話です。

これだけの摂取量だと、低炭水化物食(糖質制限食)の研究というには相応しくないと思います。

すなわち、30%未満の糖質制限食グループに関する研究は行われていないのです。

研究が行われていないのですから、発ガンリスクが増えるという根拠には全くなりません。

ちなみに、ADAは130g/日以下、2000kcal/日で26%以下を糖質制限の定義としており、バーンスイタイン医師ら糖質制限食派の医師もこれを認めています。

まずは、ブログ読者の皆さん、スーパー糖質制限食を実践して、発ガンリスクが増えるという、エビデンスはないことを明記したいと思います。

また上記と同じ理由で、スーパー糖質制限食を長期に続けて糖尿病が増えることにも、エビデンスはないことを明記したいと思います。

ハーバード大学の研究者の「Annals of Internal medicine」の論文、以前にも論評したことがありますが、再考察します。


【11/12/29 ざと
看護ジャーナル1月号を読んで
江部先生、いつも有用な情報を発信して下さいましてありがとうございます。
今日はお聞きしたい事があって書きました。

看護ジャーナルの短期集中連載特集(2012年1月号)で取り上げられているの糖質制限の話についてです。本文では無いのですが、コラム1「米国発信最新情報-緩やかな糖質制限がベスト」(P38)の内容についてです。

灰本クリニックの灰本医院長が「糖質30%未満を数十年にわたって続けるとかえって危険なのです」「動物性脂肪・たんぱく質の取りすぎが、ガンなどの発病につながることがわかったのだ。しかも長期に続けると、赤身肉や加工肉の摂取がすい臓にダメージを与える結果、かえって糖尿病の発症が増える事も示された」とあります。

データはハーバード大学でハイカーボ食を1として炭水化物の摂取制限レベルによって10段階に分けて、20年に渡って約13万人について大規模・長期観察したものである。

読んだ人は私と同様な不安を持たれていると考えますので、是非ブログで取り上げて頂ければと存じ上げます。】


ざとさん。

コメントありがとうございます。

総摂取カロリーに対して

「脂質56%、タンパク質32%、糖質12%」

という構成比がスーパー糖質制限食です。

当然、従来の一般的な食生活に比べれば、高脂質・高タンパク食となります。

ブログ読者の皆さんが一番心配なのは、高脂質・高タンパク食を長年続けたら、何らかのガンになり易くなるのではないかという懸念でしょう。

これに対しては、

「スーパー糖質制限食と発ガンのリスクに関するエビデンスはない」

というのが、結論です。

すなわち、

「スーパー糖質制限食で発ガンのリスクが増えるというエビデンスはない。」

ですし、一方

「スーパー糖質制限食で発ガンのリスクが減るというエビデンスもない。」

ということです。

これは、糖質摂取比率12%の集団と通常食の集団におけるガンの発生を、10年.20年経過を追ったような臨床研究は、現時点で存在しないので当然の結論です。

【低炭水化物食と全死亡率および死因別死亡率:二つのコホート研究

「Annals of Internal medicine
September 7 2010 vol.153 Issue5 p289-298 
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality:Two Cohort Studies
Teresa T. Fung, Rob M. van Dam, Susan E. Hankinson, Meir Stampfer, Walter C. Willett, and Frank B. Hu」

要旨

「低炭水化物食と死亡率の関連を長期にわたって調べたデータはほとんどない。今回,前向きコホート研究で,Nurses' Health Study(訳注:看護師の健康調査)に参加した85,168人の女性とHealth Professionals' Follow-up Study(訳注:医療従事者追跡研究)に参加した44,548人の男性を最大26年間追跡した。動物性脂肪および蛋白質を重視した食事では,全死亡率,心血管死亡率,がん死亡率が高かった。一方,植物性脂肪および蛋白質を重視した食事では,全死亡率と心血管死亡率が低かった。」】

この論文の、

「糖質制限食(低炭水化物食)で、動物性脂肪および蛋白質を重視した食事では、全死亡率、心血管死亡率、がん死亡率が高かった。」

を根拠にして、糖質制限食は発ガンのリスクが懸念されるというのは根本的な誤解です。

この論文はあくまでも、総摂取エネルギーの35.2~42.8%を、炭水化物から摂取しているグループにおける話です。

総摂取エネルギーの12%を糖質から摂取しているグループは、この論文のどこにも登場しないので、比較不能です。

つまり、高雄病院流のスーパー糖質制限食を実践している人においては、この論文は全く参考になりません。

炭水化物を総摂取エネルギーの60%食べているグループに比べれば、炭水化物35.2~42.8%のグループの方が、確かに低糖質食です。それで低炭水化物食のコホート研究としたのでしょう。

一方、糖質を総摂取エネルギーの12%しか食べていないグループに比べれば、炭水化物35~42%のグループは3倍以上の高糖質食であり、低糖質食とは言えません。

これまで多くの研究で、高インスリン血症による腫瘍増殖・発ガン促進作用が示されています。

糖質を総摂取エネルギーの12%とする、スーパー糖質制限食なら食事1回分の糖質は10~20gで、追加分泌インスリンは、せいぜい基礎分泌の約2倍~4倍ていどです。

一方、炭水化物摂取比率35.2~42.8%のグループは、1回の食事の糖質は50g以上であり、食事の度に約10~20倍の追加分泌インスリンが分泌されます。

すなわち、炭水化物摂取比率35.2~42.8%のグループでは、明白な発ガンリスクとなるインスリン分泌が改善できていません。

これだけのインスリン分泌量は、糖質60%のグループとさほど変わらないと思います。

スーパー糖質制限食なら、発ガンリスクのインスリン分泌は極少量で済みます。

これらのことは生理学的な事実です。

また国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」2007年、によれば、食後高血糖そのものが、ある種のガンのリスクとなります。

糖質を総摂取エネルギーの12%とするスーパー糖質制限食なら、食後高血糖は生じませんが、炭水化物摂取比率35.2~42.8%のグループは、1日3回以上食後高血糖を生じます。

「インスリン分泌が極少量」「食後高血糖がない」という、発ガンリスクを軽減させる効果があるスーパー糖質制限食において、長年続けることでそれらを上回る何らかの発ガンリスクが、存在するのかしないのかということは、今後長期にわたり検討していく必要はあるでしょう。

幸い、現在までそのような謎の発ガンリスクは知られていませんが・・・。

結論です。

「スーパー糖質制限食と発ガンのリスクに関するエビデンスはない」のですが、発ガンリスクが明白に確認されているインスリンの分泌が、スーパー糖質制限食なら、極少量に抑えられることは、生理学的事実です。

また、発ガンリスクの一つの食後高血糖も、スーパー糖質制限食なら生じません。



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Huの論文
 Huの論文は総摂取エネルギーの35.2~42.8%を、炭水化物から摂取したグループの調査でありますが、そもそもこのよう狭い範囲で差が出ること自体信じ難いものと思われます。
 何故通常の60%~スーパーの12%の広い範囲のグループの調査ではないのでしょうか。
 Huの結果から灰本先生はスーパは危険で1食制限が良いとの話をされています。これは炭水化物の摂取量が低い方にも直線関係が成り立つと仮定して話をされているのですが、それであれば摂取量の多い方にも直線関係が成り立つと考えることもでき、そうすれば通常食(60%)の方が死亡率が下がることになり、糖質制限食自体が否定されることになります。
 灰本先生はHu論文の結果から、1食の糖質制限(42.8%)を推奨されているようですが、Hu論文の結果からはさらにゆるい糖質制限を推奨されるべきと考えられます。
 いずれにしても前向きの疫学的調査が必要かなと思います。
2011/12/30(Fri) 18:09 | URL | イーサン | 【編集
推論が多いですね
学際的と言いながら、推論が多いですね。

私は、1年以上スーパー糖質制限をしていますが、脂質はω3、タンパク質は魚、大豆を主に食べ、赤肉も食べます。海藻、野菜も食べます。
お腹が空かなくなるので、楽に続けられます。

某氏の主張

穏やかローカーボ

%-Carbohydrete 30-45%
HbA1c、体重 穏やかに低下
脂質の種類  植物性中心が可能
ケトン体 (+)~(-)
推進、実行者 バランスがよい、冷静、学際的
脱落率 20-30%
当院での運用 HbA1c 6.5~11.0%


厳しいローカーボ

%-Carbohydrete 20%前後
HbA1c、体重 短期に劇的低下
脂質の種類  動物性が増す
ケトン体 (++)

推進、実行者 教祖的、妄信的、民間療法
脱落率 高い
当院での運用 HbA1c 12.0%

2011/12/30(Fri) 20:37 | URL | スーパー糖質制限実践者 | 【編集
一つ質問があります
先日はご回答ありがとうございました。
確かに糖質制限をしてみると、食後血糖値の上昇はわずかで、へたをすると下がってたりもします。インスリン注射の量が多いのでしょうね。
糖質制限をしてみると、食後の睡魔も抑えられますし、体のだるさもなくなるような感じです。
ここで質問なのですが、先生の著書を2冊買わせて頂きましたが、糖質制限のやり方として、「スーパー」「スタンダード」「プチ」とありますがどれも夕食には糖質を取らないパターンが紹介されておりますが、これは守らなければならないのでしょうか?
夕食は糖質を取って他は取らないパターンはダメなのでしょうか。

お教え頂けると幸いです。
2011/12/30(Fri) 22:30 | URL | 糖尿僧 | 【編集
Re: 一つ質問があります
糖尿僧 さん。

拙著のご購入ありがとうございます。

夕食に糖質を摂取して血糖値が上昇すると、運動もしないし脳も眠ってしまうので
朝や昼に比べて血糖値が下がりにくいので、プチでも夕食抜きが推奨です。

糖尿僧 さんはインスリンを打っておられますので、原則は原則として、
適宜夕食に糖質でもいいと思います。
ベストよりベターで長く続くということも大切ですので。
糖質を摂るときはインスリンの量と糖質量のマッッチング(糖質管理)が重要です。

もう一つ原則は糖質制限食でインスリンの量が減らせるほど、人体には優しいです。
2011/12/31(Sat) 08:46 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: Huの論文
イーサン 様。

仰有る通り、灰本先生のは仮説であり、エビデンスではありません。

せめて、ADAのいう、炭水化物摂取比率26%以下のグループを設定して欲しかったのですが、

研究参加者を高炭水化物群~低炭水化物群で、10%毎に区切っていって10群の数を揃えていますので、
低炭水化物群が35.2~42.8%になったのでしょうね。

一番高炭水化物群が53.7~60.2%で、その群の死亡率を1.0として、残りの9群と比較しています。

客観的にみて、高炭水化物群(53.7~60.2%)~中炭水化物群(35.2~42.8%)までの10群を比較検討した研究であり、低炭水化物群(26%以下)はないということに尽きますね。

ローカーボスコアの定義では、29.3%未満が点数10点満点であるのですが、
それに相当する数が少なすぎてとても10%の群にはなり得なかったということでしょう。
2011/12/31(Sat) 09:40 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 推論が多いですね
スーパー糖質制限実践者 さん。

「学際的と言いながら、推論が多いですね。」

同感です。

また現在、「リノール酸の過剰摂取が、動脈硬化やガンのリスクとなる」というエビデンスが出てきました。
植物油(主成分がリノール酸)の盲信は危険です。

☆☆☆
日本脂質栄養学会の提言(2002年9月)の要約

「本学会は 1992年以来、必須脂肪酸である リノール酸の摂取過剰と健康の問題について討論。その結果、日本人のリノール酸摂りすぎを是正する方向に栄養指導を改めることが急務との結論に達した。 リノール酸摂りすぎの害(心臓・脳血管系疾患、欧米型癌、アレルギー性疾患、その他炎症性疾患)については、動物実験のみならず臨床的にも明らかにされてきた。」
2011/12/31(Sat) 09:53 | URL | ドクター江部 | 【編集
ご回答ありがとうございました
なるほど、食後血糖値の上昇を考えると夕食を糖質制限するのがベストな方法ですね。糖質を取っても活動時間の取れる日中は血糖値の上昇は少なめの可能性が高いが、夕食後は体をリラックスさせる事の方が多いからという理由なのですね。
私はこのブログを知る前から、ご飯の量は減らしてましたが、さらに糖質制限を加えてHbA1cの数値の改善を目指します。スーパーの実践は難しいですが、(昨日の昼は助六寿司でした)プチやスタンダードは実践していきます。

先生やブログの読者の皆様、よいお年をお迎え下さい。
2011/12/31(Sat) 18:12 | URL | 糖尿僧 | 【編集
良いお年をお迎え下さい
江部先生1年間色々とブログで情報発信して下さいまして誠に有難うございました。
また、私の質問にも詳細な解説でお答え頂き誠にありがとうございます。

ハーバード大学の研究者が論文発表したコホート研究についての解説をどうもありがとうございました。
そういうカラクリだったのですね。中立的な立場で書いている看護ジャーナルに掲載されていて、更には灰本先生が「30%未満の糖質制限食を数十年にわたって続けるとかえって危険なのです」と仰っていたので、結構ビックリしてしまいました。

江部先生の解説を読んで大変に安心いたしました。
それでは、皆さんも良いお年をお迎え下さいませ。
2011/12/31(Sat) 21:00 | URL | ざと | 【編集
オメガ6系の取り過ぎは怖い。
トランス脂肪酸も怖い。
昔、動物も放牧されて草とか食べてる動物の肉は6系と3系のバランスいいけど、穀物とか酸化した魚粉とか与えられてる動物の肉は6系優勢になり過ぎて少し危険という説を見たことありますね。
魚も天然魚はいいけど、養殖魚は駄目、みたいな。
だから、その肉がどういう風に育ってきたものかを知る事も大切かなと思っております。
2011/12/31(Sat) 22:38 | URL | 肉の履歴 | 【編集
日本ローカーボ食研究会HP
小早川Drの意見が非常に参考になります
http://low-carbo-diet.com/voice/my-opinion/the-situation-of-the-medical-practitioner/

<参考>
米国糖尿病学会の治療指針2012年版
1) 飽和脂肪酸は、全カロリーの7%未満にすべき(evidence B)
2) トランス脂肪酸の摂取をへらすと、LDLが減りHDLが上昇する(evidence A)
http://care.diabetesjournals.org/content/35/Supplement_1/S11.full#sec-15
…ただし1)は2011年版ではevidence Aであった。
2012/01/02(Mon) 12:49 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 日本ローカーボ食研究会HP
精神科医師A さん。

いつも情報をありがとうございます。

本年もよろしくお願い申しあげます。
2012/01/03(Tue) 09:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
教えて下さい
いつも本やブログを参考にさせて頂いております。
以前一度、空腹時血糖値、HbA1cも改善しているとコメントに書かせて頂いたのですが、ここまで来てまた悩んでいます。
一度は体重が下げ止まったと思ったのですが、また少しずつ減少しています。162cmの身長で、52kgだったのが、一旦48kgぐらいまで落ち、また徐々に下がりはじめ、現在45kgを切ろうとしています。おっしゃるとおり果物を食べたり、ナッツを多めに取ったりしているのですが、そうするとやはり血糖値は上がります。
何より見た目が貧相な感じになり、筋肉が衰え、老けた感じがするのです。まだ40代な
のでちょっとショックを受けています。

早朝時血糖値は100くらいまで落ちたのですが、現在は120~150をうろうろするようになりました。
ただ、早朝時、170とかになる時があるので慌てて計り直すと120だったりして、いつも続けて2回計るのですが(指を変えたりして)、必ず1回目が30~50は確実に高いのです。
誤差にしては大きすぎるような気がして、どちらを信じればいいのかと不安になります。

早朝時の測定値の誤差、体重の減少、筋肉の衰え等について教えて頂ければと思います。
ちなみにHbA1cは、糖質制限食前は6.9だったのですが、5.3まで下がり、現在は5.7です。
2012/01/05(Thu) 11:39 | URL | すずな | 【編集
Re: 教えて下さい
すずな さん。

確かに体重が減りすぎですね。

全て、摂取エネルギー不足から来ていると思います。

脂質・タンパク質を充分量摂取して、まずは48kgを回復してください。

それで、誤差は兎も角として、空腹時血糖値も筋肉も改善すると思います。
2012/01/05(Thu) 17:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 教えて下さい
すずなさん、初めまして。

私の体験談で恐縮ですが、カロリーを取るのにはマヨネーズが結構効きます。
一時期、自家製マヨネーズに凝ってしまい、毎食のサラダに付けて食べていたら、少し体重が増えてしまいました(汗)。

その時調べたらマヨネーズは大さじ一杯で100kcal程度あったのですよ。
相当カロリーが高いなぁと思った記憶が残っています。
もしよかったら試して見て下さいね。

では
2012/01/06(Fri) 00:02 | URL | ざと | 【編集
Re: 2月5日セミナー出席の件
有賀 さん。

申し込み:reborn@big.or.jp

★事前に郵便振替でご送金ください。当日受付は致しません。
メールでお申し込みをいただいた後に、
予約完了と会費お振込のご案内のメールを送ります。
入場券は発行しませんので、当日郵便振替の伝票をご持参ください。
   
申込〆切 2012年1月30日
2012/01/20(Fri) 23:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
論文への見解
この論文について、2名の医師の見解を示します

1) 南江堂「内科」108(4)671-676, 2011年10月号 灰本 元
■ローカーボ食(炭水化物,糖質制限食)による2型糖尿病の治療
―ローカーボ食の大規模長期観察コホー卜研究―
 最近、総死亡率をアウトカムとしてHCDとLCDを比較した大規模長期観察コホート(女:8.5万人26年間,男:4.5万人20年間)の結果が米国から発表された。それによると、厳しく炭水化物・糖質制限を制限すればするほどHCD群に比べて総死亡率は有意に上昇した.
 ところがLCD群の食事内容をさらに詳しく解析すると、総死亡率を押し上げたのは動物性脂肪・蛋自質を中心に摂取した中くらいの炭水化物制限のLCD群(35~37%C)で、HCD群に比べて年齢・総摂取エネルギー調整ハザード比(HR)は1.66(男)~1.26(女)へ有意に上昇し、心血管死も癌死(とくに肺癌と結腸癌)も有意に増えた。
 一方、植物性脂肪・蛋白質を中心に摂取した群では炭水化物・糖質制限も緩やかで(40~43%C)、HRは0.77(男)~0.77(女)、むしろ有意に死亡率は減少した。
(中略)
 一方で,大規模観察コホート研究はLCDの課題も浮き彫りにした。厳しいLCDは重症DMヘ短期間に限定するほうが安全である。長期的には、緩やかな炭水化物制限をしながら植物性脂肪・蛋白質を中心に摂取するLCDが、今後世界の主流になるであろう
 LCD: low-carbohydrate diet, 低炭水化物食、ローカーボ食
 HCD: high-carbohydrate low-fat diet, 高炭水化物・低脂肪食

2) Diabetes Frontier 22(1)35-39, 2011年2月
野田絵美子(東京医科大学内科学第三講座 糖尿病・代謝・内分泌内科)

■低炭水化物食と癌
 心疾患、癌、糖尿病をもたない男女に対し行った米国でのコホート研究によると,低炭水化物食の中でも、動物由来を中心とした高たんぱく、高脂質食では癌や心血管イベントなどを含んだ年齢別総死亡率は高く、植物由来を中心とした高たんぱく、高脂質食では年齢別総死亡率は低かった。
 低炭水化物食の効果は、糖質以外の栄養素である脂質やたんぱく質の種類に大きく影響されると考えられた。

*両名の見解の特徴を示すと

1) 厳しいLCDは、重症糖尿病に対し短期間に限定するほうが安全である。長期的には、緩やかな炭水化物制限をしながら植物性脂肪・蛋白質を中心に摂取するLCDが、今後世界の主流になるであろう

2) 低炭水化物食の効果は、糖質以外の栄養素である脂質やたんぱく質の種類に大きく影響されると考えられた
2012/02/02(Thu) 18:09 | URL | 精神科医師A | 【編集
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