2011年06月13日 (月)
こんにちは。
2010年後半、日本脂質栄養学会と日本動脈硬化学会の間で、コレステロール論争が持ち上がったのは記憶に新しいところです。
日本動脈硬化学会が2007年に作成したガイドラインは、基本的に「コレステロールは低ければ低いほど良い」という立場です。
これに対して、日本脂質栄養学会は「コレステロールは高い方が長生き」というガイドラインを2010年に作成し、論争を挑みました。
この日本脂質栄養学会の「コレステロール高めが長生き」ガイドラインに対して、北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏は、これまで批判的な立場をとって論陣をはって来られました。
山田悟氏は、私の信頼する医師の一人で、一貫してニュートラルな立場からエビデンスに基づいた発言をして来られました。
私自身は、これまでコレステロールが少々高めでも、スタチンなどの薬を使って下げることは殆んどしない方針で臨床活動をしてきました。
この点、山田氏の日本脂質栄養学会の「コレステロール高めが長生き」ガイドラインに対する批判は一理あるだけに、私も悩んでいました。
その中で
【医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年5月31日号】
に掲載された山田氏の論考は、最近発表された自治医大コホート研究で、
「各種因子を調整後も低コレステロールと高死亡率に有意な関連が認められた。」
ということを、虚心坦懐に紹介しておられます。
エビデンスに基づき、ニュートラルな立場で情報を発信するという山田氏の、面目躍如たるものがありました。
この自治医大の研究、規模も大きくて期間も長く、コホート研究としてはNIPPON DATA 80と並ぶ良質のエビデンスです。
日本動脈硬化学会は、
「NIPPON DATA80においては肝疾患が交絡因子となって、TC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させており、それを調整したら、死亡率は上昇していない。」
との見解です。
今回の自治医大のコホート研究は、その点を考慮して肝疾患などを除外して調整したあとも、低コレステロール群のほうが死亡率が高かったと報告されました。
特に女性においては、
第1群:160mg/dL未満群 →死亡率が一番高い
第2群:160~200mg/dL未満群,
第3群:200~240mg/dL未満群, →第2群より死亡率が低い
第4群:240mg/dL以上群 →第2群より死亡率が低い
明確に、コレステロール値が低いほど、死亡率が上昇していました。
この結果をどう解釈するかは、脂質管理の在り方に大きな影響を及ぼす可能性があります。
高コレステロール値容認派の私としては、ちょっぴり嬉しいエビデンスの登場でした。
江部康二
☆☆☆☆☆参考
【医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年5月31日号】
『不毛な議論はやめて実りある介入試験を』北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
研究の背景:昨年のコレステロール議論は鎮静化
昨年(2010年)9月,日本脂質栄養学会(以下,脂質栄養学会)が「長寿のためのコレステロールガイドライン」を発行したことで,コレステロールについての議論が盛り上がったことは記憶に新しい(関連記事1,2,3,4)。
しかし,このガイドラインはコレステロール異常値に対しての臨床的指針を示したものというよりは,単に日本動脈硬化学会(以下,動脈硬化学会)の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」に対する異論を世間が注目したくなるような形で発表したものという色彩が強かった。これに対する動脈硬化学会の反論は以下のようなものであった。
(1)ガイドラインでありながらエビデンスレベルが明示されていない。
(2)十分に交絡因子を調整していない観察研究から因果関係を導きだしている。
(3)介入試験と観察研究であるコホート研究を混同し,介入試験なしに結論を出している。
昨年来の議論は鎮静化しているように思われるが,このたび自治医大コホート研究から,比較的しっかりと調整をしてもなお,低コレステロール値が高死亡率と関連していたという興味深い結果が発表されたのでご紹介したい(J Epidemiol 2011; 21: 67-74)。
研究のポイント1:日本の12地域1万2,334人の健常者を対象としたコホート研究
自治医大コホート研究は1992年度に開始された,北は岩手県から南は福岡県までの全国12地域での住民健診のデータを集積しているコホート研究である。この研究は,生活様式,血清脂質などと心血管疾患発症との関連を見ることを目的に開始されたもので,1992年4月~1995年7月に基礎データが集積され,計1万2,490人が登録された。
平均11.9年の経過観察(14万5,312人・年)が行われ,死亡については死亡診断書から死因を判定することとした。住民健診のデータであるので(論文の抄録のMethodsの項にはhealthy adultsを対象としたと記載されてはいるが),何らかの疾病を抱えている人を除外してはいない。
登録時40~69歳であった1万2,334人〔男性4,839人,BMI 23.1,収縮期血圧(SBP)130mmHg程度,拡張期血圧(DBP)78mmHg程度〕を対象にして,
基礎データの総コレステロール(TC)値に従って,
第1群:160mg/dL未満群,
第2群:160~200mg/dL未満群,
第3群:200~240mg/dL未満群,
第4群:240mg/dL以上群―の4群に分割し,
その後の死亡率や死因を検討したのが今回の報告である。
また,NIPPON DATA80において肝疾患が交絡因子となってTC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させていたことから,死因から肝疾患を除外した場合についての検討も行われた。
研究のポイント2:さまざまな調整をしても低コレステロール群の死亡率が高い
経過観察期間中のデータの欠損を除外して1万1,869人のデータが解析された。経過観察期間中に635人の男性と423人の女性が死亡し,うち34人の男性と15人の女性が肝疾患(肝臓がん,肝硬変,その他)を死因としていた。
基礎データのTC値に従って,群別の比較をすると(第2群を基準として),男性では基準群での死亡率のハザード比が最低であったものの,女性では第3群,第4群(TC高値の群)の方が第2群より低く,第1群(TC低値の群)の死亡率が最も高いという結果であった(表1)。これは,肝疾患を死因とする死亡を除外しても同様であり(表2),がんや心血管疾患の既往者を除外しても同様であった(表3)。
第1群の死因として,第2群よりもハザード比が有意に高かったのは,男性ではがん,女性では脳出血,心不全であった。
私の考察:NIPPON DATA80と比較すると…全く逆の結果とは言えない
正直に申し上げると,「コレステロールが低いと死亡率が高くなる」という話にはアレルギーのようなものが私自身の中にでき,胡散臭いものを見るような眼(先入観)ができあがってしまっていた。しかし,本研究は非常に真摯に解析が行われていた。
ここで,改めて動脈硬化学会ガイドラインが採用しているNIPPON DATA80(Atherosclerosis 2007; 190: 216-223)をながめ,本研究の結果との相違について考えたい。
NIPPON DATA80は,1980年の厚生省(当時)の循環器疾患基礎調査対象者である30歳以上の9,216人を対象とした17年におよぶコホート研究であり,TC最低群(160mg/dL未満群)とTC最高群(260mg/dL以上群)において総死亡率の上昇が見られたが,TC最低群での総死亡率の上昇は肝疾患による死亡を除外すると有意でなくなったのに対し,TC最高群での総死亡率の上昇は調整によりハザード比がより高くなったというものであった。
この結果を文章で読むと,NIPPON DATA80はコレステロール高値が悪いという印象になり,今回の自治医大コホート研究のコレステロール低値が悪いという印象と,逆な結果のように思える。しかし,総死亡率のデータを比較すると以下のようになる(表4,5)。
こうして見てみると,TC 160mg/dL未満での死亡率の高さが自治医大コホート研究で顕著になってはいるものの,両者にさほどの相違がないことが分かる。
では,この2つの研究の印象の違いはどこから来るかと言えば,心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の差異に由来する。特に自治医大コホート研究において女性における高コレステロール血症での心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率上昇が全く見られないところが異なっている(表6,7)。
しかし,上記の表から分かるように,NIPPON DATA80においても女性で心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率が上昇しているのはTC 260mg/dL超であり,240~260mg/dLの群では死亡率の上昇は見られていない。
そう考えると,自治医大コホート研究において240mg/dL超のTC最高群において心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の上昇がなくとも,必ずしも両研究の結果が異なるとは言い切れないわけである。
このように,両研究ともに1万人程度を対象として,10年以上にわたって経過を観察した信頼度の高い研究であり,一見,両者は全く逆の結果を呈したような印象であるが,そのように断じることはできない。
明らかに異なるのは,
(1)TC値の群別の方法,
(2)対象者の年齢(NIPPON DATA80 平均50.0歳,自治医大コホート研究55.2歳),
(3)観察期間におけるスタチンの処方可能な期間(1989年以降)が占める割合―である。
今回の論文の筆者らも,考察において“高コレステロールのリスクが観察期間中の治療介入により消失してしまい,低コレステロールのリスクが強調された可能性”や“低栄養の存在の可能性”や“甲状腺機能亢進症のようなコレステロールを低下させる肝疾患以外の疾患の可能性”に言及している。
私としては,コレステロールの群別をNIPPON DATA80と同様にした場合のTC最高群での成績や,TC最低群を正常栄養者と低栄養者とに分類した場合の成績などを知りたいものである。
また,今回の論文の筆者らの指摘する可能性を除外するためにもランダム化比較試験(RCT)が必要だと思われる。以前,私が脂質栄養学会に提言した「スタチン剤を使用していて低脂血症を来している方を対象に,スタチン剤を中止する介入群を,スタチン剤を継続する対照群と比較する研究」の正当性は,今回の研究結果によって支持されるものと思われ,各施設の倫理委員会を通る可能性が格段に高まったような気がする。
ぜひ,脂質栄養学会の先生方にはそのような研究を実施し,低コレステロール血症が死亡率上昇のinnocent biomarkerではなくtrue risk factorであるとする脂質栄養学会の仮説をきっちりと検証していただきたい。
山田 悟(やまだ さとる)氏
1994年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。
2010年後半、日本脂質栄養学会と日本動脈硬化学会の間で、コレステロール論争が持ち上がったのは記憶に新しいところです。
日本動脈硬化学会が2007年に作成したガイドラインは、基本的に「コレステロールは低ければ低いほど良い」という立場です。
これに対して、日本脂質栄養学会は「コレステロールは高い方が長生き」というガイドラインを2010年に作成し、論争を挑みました。
この日本脂質栄養学会の「コレステロール高めが長生き」ガイドラインに対して、北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏は、これまで批判的な立場をとって論陣をはって来られました。
山田悟氏は、私の信頼する医師の一人で、一貫してニュートラルな立場からエビデンスに基づいた発言をして来られました。
私自身は、これまでコレステロールが少々高めでも、スタチンなどの薬を使って下げることは殆んどしない方針で臨床活動をしてきました。
この点、山田氏の日本脂質栄養学会の「コレステロール高めが長生き」ガイドラインに対する批判は一理あるだけに、私も悩んでいました。
その中で
【医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年5月31日号】
に掲載された山田氏の論考は、最近発表された自治医大コホート研究で、
「各種因子を調整後も低コレステロールと高死亡率に有意な関連が認められた。」
ということを、虚心坦懐に紹介しておられます。
エビデンスに基づき、ニュートラルな立場で情報を発信するという山田氏の、面目躍如たるものがありました。
この自治医大の研究、規模も大きくて期間も長く、コホート研究としてはNIPPON DATA 80と並ぶ良質のエビデンスです。
日本動脈硬化学会は、
「NIPPON DATA80においては肝疾患が交絡因子となって、TC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させており、それを調整したら、死亡率は上昇していない。」
との見解です。
今回の自治医大のコホート研究は、その点を考慮して肝疾患などを除外して調整したあとも、低コレステロール群のほうが死亡率が高かったと報告されました。
特に女性においては、
第1群:160mg/dL未満群 →死亡率が一番高い
第2群:160~200mg/dL未満群,
第3群:200~240mg/dL未満群, →第2群より死亡率が低い
第4群:240mg/dL以上群 →第2群より死亡率が低い
明確に、コレステロール値が低いほど、死亡率が上昇していました。
この結果をどう解釈するかは、脂質管理の在り方に大きな影響を及ぼす可能性があります。
高コレステロール値容認派の私としては、ちょっぴり嬉しいエビデンスの登場でした。
江部康二
☆☆☆☆☆参考
【医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年5月31日号】
『不毛な議論はやめて実りある介入試験を』北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
研究の背景:昨年のコレステロール議論は鎮静化
昨年(2010年)9月,日本脂質栄養学会(以下,脂質栄養学会)が「長寿のためのコレステロールガイドライン」を発行したことで,コレステロールについての議論が盛り上がったことは記憶に新しい(関連記事1,2,3,4)。
しかし,このガイドラインはコレステロール異常値に対しての臨床的指針を示したものというよりは,単に日本動脈硬化学会(以下,動脈硬化学会)の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」に対する異論を世間が注目したくなるような形で発表したものという色彩が強かった。これに対する動脈硬化学会の反論は以下のようなものであった。
(1)ガイドラインでありながらエビデンスレベルが明示されていない。
(2)十分に交絡因子を調整していない観察研究から因果関係を導きだしている。
(3)介入試験と観察研究であるコホート研究を混同し,介入試験なしに結論を出している。
昨年来の議論は鎮静化しているように思われるが,このたび自治医大コホート研究から,比較的しっかりと調整をしてもなお,低コレステロール値が高死亡率と関連していたという興味深い結果が発表されたのでご紹介したい(J Epidemiol 2011; 21: 67-74)。
研究のポイント1:日本の12地域1万2,334人の健常者を対象としたコホート研究
自治医大コホート研究は1992年度に開始された,北は岩手県から南は福岡県までの全国12地域での住民健診のデータを集積しているコホート研究である。この研究は,生活様式,血清脂質などと心血管疾患発症との関連を見ることを目的に開始されたもので,1992年4月~1995年7月に基礎データが集積され,計1万2,490人が登録された。
平均11.9年の経過観察(14万5,312人・年)が行われ,死亡については死亡診断書から死因を判定することとした。住民健診のデータであるので(論文の抄録のMethodsの項にはhealthy adultsを対象としたと記載されてはいるが),何らかの疾病を抱えている人を除外してはいない。
登録時40~69歳であった1万2,334人〔男性4,839人,BMI 23.1,収縮期血圧(SBP)130mmHg程度,拡張期血圧(DBP)78mmHg程度〕を対象にして,
基礎データの総コレステロール(TC)値に従って,
第1群:160mg/dL未満群,
第2群:160~200mg/dL未満群,
第3群:200~240mg/dL未満群,
第4群:240mg/dL以上群―の4群に分割し,
その後の死亡率や死因を検討したのが今回の報告である。
また,NIPPON DATA80において肝疾患が交絡因子となってTC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させていたことから,死因から肝疾患を除外した場合についての検討も行われた。
研究のポイント2:さまざまな調整をしても低コレステロール群の死亡率が高い
経過観察期間中のデータの欠損を除外して1万1,869人のデータが解析された。経過観察期間中に635人の男性と423人の女性が死亡し,うち34人の男性と15人の女性が肝疾患(肝臓がん,肝硬変,その他)を死因としていた。
基礎データのTC値に従って,群別の比較をすると(第2群を基準として),男性では基準群での死亡率のハザード比が最低であったものの,女性では第3群,第4群(TC高値の群)の方が第2群より低く,第1群(TC低値の群)の死亡率が最も高いという結果であった(表1)。これは,肝疾患を死因とする死亡を除外しても同様であり(表2),がんや心血管疾患の既往者を除外しても同様であった(表3)。
第1群の死因として,第2群よりもハザード比が有意に高かったのは,男性ではがん,女性では脳出血,心不全であった。
私の考察:NIPPON DATA80と比較すると…全く逆の結果とは言えない
正直に申し上げると,「コレステロールが低いと死亡率が高くなる」という話にはアレルギーのようなものが私自身の中にでき,胡散臭いものを見るような眼(先入観)ができあがってしまっていた。しかし,本研究は非常に真摯に解析が行われていた。
ここで,改めて動脈硬化学会ガイドラインが採用しているNIPPON DATA80(Atherosclerosis 2007; 190: 216-223)をながめ,本研究の結果との相違について考えたい。
NIPPON DATA80は,1980年の厚生省(当時)の循環器疾患基礎調査対象者である30歳以上の9,216人を対象とした17年におよぶコホート研究であり,TC最低群(160mg/dL未満群)とTC最高群(260mg/dL以上群)において総死亡率の上昇が見られたが,TC最低群での総死亡率の上昇は肝疾患による死亡を除外すると有意でなくなったのに対し,TC最高群での総死亡率の上昇は調整によりハザード比がより高くなったというものであった。
この結果を文章で読むと,NIPPON DATA80はコレステロール高値が悪いという印象になり,今回の自治医大コホート研究のコレステロール低値が悪いという印象と,逆な結果のように思える。しかし,総死亡率のデータを比較すると以下のようになる(表4,5)。
こうして見てみると,TC 160mg/dL未満での死亡率の高さが自治医大コホート研究で顕著になってはいるものの,両者にさほどの相違がないことが分かる。
では,この2つの研究の印象の違いはどこから来るかと言えば,心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の差異に由来する。特に自治医大コホート研究において女性における高コレステロール血症での心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率上昇が全く見られないところが異なっている(表6,7)。
しかし,上記の表から分かるように,NIPPON DATA80においても女性で心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率が上昇しているのはTC 260mg/dL超であり,240~260mg/dLの群では死亡率の上昇は見られていない。
そう考えると,自治医大コホート研究において240mg/dL超のTC最高群において心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の上昇がなくとも,必ずしも両研究の結果が異なるとは言い切れないわけである。
このように,両研究ともに1万人程度を対象として,10年以上にわたって経過を観察した信頼度の高い研究であり,一見,両者は全く逆の結果を呈したような印象であるが,そのように断じることはできない。
明らかに異なるのは,
(1)TC値の群別の方法,
(2)対象者の年齢(NIPPON DATA80 平均50.0歳,自治医大コホート研究55.2歳),
(3)観察期間におけるスタチンの処方可能な期間(1989年以降)が占める割合―である。
今回の論文の筆者らも,考察において“高コレステロールのリスクが観察期間中の治療介入により消失してしまい,低コレステロールのリスクが強調された可能性”や“低栄養の存在の可能性”や“甲状腺機能亢進症のようなコレステロールを低下させる肝疾患以外の疾患の可能性”に言及している。
私としては,コレステロールの群別をNIPPON DATA80と同様にした場合のTC最高群での成績や,TC最低群を正常栄養者と低栄養者とに分類した場合の成績などを知りたいものである。
また,今回の論文の筆者らの指摘する可能性を除外するためにもランダム化比較試験(RCT)が必要だと思われる。以前,私が脂質栄養学会に提言した「スタチン剤を使用していて低脂血症を来している方を対象に,スタチン剤を中止する介入群を,スタチン剤を継続する対照群と比較する研究」の正当性は,今回の研究結果によって支持されるものと思われ,各施設の倫理委員会を通る可能性が格段に高まったような気がする。
ぜひ,脂質栄養学会の先生方にはそのような研究を実施し,低コレステロール血症が死亡率上昇のinnocent biomarkerではなくtrue risk factorであるとする脂質栄養学会の仮説をきっちりと検証していただきたい。
山田 悟(やまだ さとる)氏
1994年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。
はじめまして。
私の父(73歳)が糖尿病を患っており、最近クレアチニンの数値も少し悪くなりはじめました。
大分県在住で遠方のため通院が難しいと思います。
養腎降濁湯を処方して下さる近い病院があれば、教えていただければ幸いです。
宜しくお願いいたします。
私の父(73歳)が糖尿病を患っており、最近クレアチニンの数値も少し悪くなりはじめました。
大分県在住で遠方のため通院が難しいと思います。
養腎降濁湯を処方して下さる近い病院があれば、教えていただければ幸いです。
宜しくお願いいたします。
あき さん。
三宅先生とご相談ください。
三宅漢方医院
三宅和久
092-716-9039
〒810-0041
福岡市中央区大名パークビル2F
三宅先生とご相談ください。
三宅漢方医院
三宅和久
092-716-9039
〒810-0041
福岡市中央区大名パークビル2F
2011/06/14(Tue) 09:00 | URL | ドクター江部 | 【編集】
お忙しい中、お返事いただき誠にありがとうございます。
すぐに相談してみようと思います。
すぐに相談してみようと思います。
はじめまして
49歳男性です。
脂質数値が悪く、コレステロール降下薬の服用を強く勧めらていましたが、先生のブログを拝見し糖質制限食を始めました。1年たって検査したところほとんど改善されておらずいささか落胆しております。LDLは変わらないケースもあると拝見していましたがHDLは基本的に上がると認識しておりました。なにかやり方が悪かったのでしょうか?
1年前 LDL189,HDL58,TG129
スタンダード糖質制限食1年実施
1年後 LDL186,HDL55,TG96
49歳男性です。
脂質数値が悪く、コレステロール降下薬の服用を強く勧めらていましたが、先生のブログを拝見し糖質制限食を始めました。1年たって検査したところほとんど改善されておらずいささか落胆しております。LDLは変わらないケースもあると拝見していましたがHDLは基本的に上がると認識しておりました。なにかやり方が悪かったのでしょうか?
1年前 LDL189,HDL58,TG129
スタンダード糖質制限食1年実施
1年後 LDL186,HDL55,TG96
うみぶどう さん
HDLコレステロールが増えなかったのは不思議ですが、
40mg以上でもともと正常です。
中性脂肪が改善しています。
中性脂肪とHDLコレステロールが正常の場合、LDLコレステロールは上質です。
上質のLDLは動脈硬化のリスクとなりません。
HDLが40mg未満で、中性脂肪高値の場合は、LDLは小粒子LDLや酸化LDLが増えていきます。
酸化LDLは真の悪玉で異物であり、動脈硬化のリスクです。
カテゴリーの「コレステロール」の項をご参照ください。
HDLコレステロールが増えなかったのは不思議ですが、
40mg以上でもともと正常です。
中性脂肪が改善しています。
中性脂肪とHDLコレステロールが正常の場合、LDLコレステロールは上質です。
上質のLDLは動脈硬化のリスクとなりません。
HDLが40mg未満で、中性脂肪高値の場合は、LDLは小粒子LDLや酸化LDLが増えていきます。
酸化LDLは真の悪玉で異物であり、動脈硬化のリスクです。
カテゴリーの「コレステロール」の項をご参照ください。
2013/03/24(Sun) 09:16 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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