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糖尿病と病理的ケトン体
こんばんは、江部康二です。先ほど夜診が終了し、帰宅しました。

さて、8.20のブログで「生理的ケトン体」のことを説明しました。今日は「病理的ケトン体」のことを考えてみましょう。

糖尿病インスリンの作用不足があり、細胞内にうまくブドウ糖が取り込めなくなる病気で、そのため慢性の高血糖状態が生じます。

高血糖にもいろんなレベルがありますが、非常に重症の糖尿病を考えてみましょう。

血糖値が500mg/dl以上もあり、尿中ケトン体が強陽性で、口渇・多飲・多尿・腹痛・悪心・嘔吐・脱水・意識レベル低下などの症状があれば、糖尿病性ケトアシドーシスと診断できます。もちろん血中ケトン体も高値であり、生理的食塩水の点滴・速効型インスリンの静注など緊急的治療が必要となります。

ただし、血糖値が300mg/dl程度でも、糖尿病性ケトアシドーシスを生じることもありえるので注意は必要です。

糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝失調状態です。「インスリン作用の極度の低下、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンの過剰」により、糖利用の低下・脂肪分解の亢進がおこり、高血糖と高遊離脂肪酸血症を生じます。

遊離脂肪酸は、インスリン欠乏下の肝では、急速な酸化をうけケトン体に分解されます。血中のケトン体が過剰に蓄積して血液の緩衝作用を上回ってくると、アシドーシスや脱水となり、重症では昏睡にいたります。

即ち「病理的ケトン体産生の亢進」は、インスリン作用の欠乏が前提にある病態であり、1型糖尿病患者さんのシックデイなどの時にに起こることがほとんどです。

2型糖尿病では、清涼飲料水多飲による、所謂「ペットボトル症候群」でケトアシドーシスを生じることがあります。

断食や 糖質制限食実践に伴う「生理的ケトン体産生の亢進」の場合は、インスリン作用の欠乏はありませんし、血液の緩衝作用も有効に作用しています。

例えば断食の初期は一過性にアシドーシスになりますが、緩衝作用で徐々に補正されていきます。また、健常人が激しい運動をした場合にも、一過性に血中ケトン体は増加しますが、勿論生理的現象です。

結論

インスリンの作用が欠乏していて高血糖を伴う、血中・尿中ケトン体の上昇は極めて危険な病態です。

一方、インスリンの作用が確保されていて高血糖を伴わない血中・尿中ケトン体の上昇は、生理的範囲内の現象であり、人類400万年の歴史のなかで日常的に経験されてきたことなのです。
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
いきなりご質問で申し訳ありません。糖質制限食実行中です約2ヶ月半程になりますが2日後に旅行があって食事を久しぶりに思いっきり食べる事になりそうで楽しみな反面怖いです。私は糖尿では無いのですがグルコバイやグルファストを入手したいのですが処方せんなので医者の診断が必要なんですよね?どうしたらよいでしょう?他に代わる物とかありますか??
2007/08/22(Wed) 11:55 | URL | つく | 【編集
大変解り易かったです。
ありがとうございます。
こういうお話は、受診の際、主治医先生ともお話しする機会もないので、勉強になりました。
2007/08/23(Thu) 10:16 | URL | my | 【編集
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