2023年09月22日 (金)
こんにちは。
外来診察で、血糖自己測定器(SMBG)を所有している糖尿病患者さんから、
「食後血糖値はいつ測定したら良いですか?」という質問が、よくあります。
これに対しては、
「自分の食後血糖値のピーク時間に検査したら良いです。」と答えます。
日曜日や休日に
<朝食前・60分後・90分後・120分後・150分後・180分後>
の血糖値を測定して、自分の食後血糖値のピーク上昇の時間帯を知っておくと便利です。
それでは、
健常者および糖尿人における食後血糖値のピーク時間は、
どのくらいなのでしょうか?
答えは、
1)耐糖能正常者24名の食後血糖値のピークは、40分から50分
2)HbA1c8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピーク
3)HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピーク
です。
ピークが、後にずれるほど、耐糖能が良くないと言えるようです。
上記データは慈恵医科大学の西村理明氏の研究結果です。(*)
西村氏はCGMを駆使して血糖の変動を研究しています。
例えば、耐糖能正常者の24人を調べたところ、
朝食後、昼食後、夕食後ともに血糖のピークは、40分から50分の時間帯に収まっていました。
西村氏は、
「スクリーニングの観点では、食後1時間の血糖値を見るのが重要なのは明らか」
とこれまでの検討から述べています。
さらに、治療目標の観点から、糖尿病患者の血糖変化も検証しています。
その結果、HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピークがあったものの、
8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピークがありました。
西村氏は、「管理目標として考える場合にも食後1時間をめどに血糖を測定するのが重要」としています。
現在、75g経口ブドウ糖負荷試験では、
糖尿病の診断としては、負荷後1時間値ではなく、
負荷後2時間値で評価しています。
一方、IDF(国際糖尿病連合)の指針は2011年に改訂され、
「食後高血糖の目標値は食後の時間にかかわらず、160mg/dL未満にする」
と変更されました。
つまり糖尿病合併症予防のためには、食後1時間値と2時間値も含めて
160mg/dl未満が目標となります。
糖尿病の早期発見には、食後2時間血糖値ではなく、
食後1時間血糖値による評価が、有用と考えられます。
私も、糖質制限食を推進する立場としては、
食後1時間血糖値を、IDFの目標のように、160mg/dl未満を目指すのが良いと思います。
スーパー糖質制限食なら、ほとんどの2型糖尿病患者においてそれが可能となります。
なお、自分の食後血糖値のピークは、休みの日などに、一度でよいので、
<食前、食後30分、食後60分、食後90分、食後120分、食後150分、食後180分>
などを測定して、知っておくと便利です。
ピークがわかれば、今後は食後血糖値のピーク時だけ測定すればよいです。
(*)
m3.com
https://www.m3.com/clinical/sanpiryoron/152762
食後血糖値、1時間か2時間か?
江部康二
外来診察で、血糖自己測定器(SMBG)を所有している糖尿病患者さんから、
「食後血糖値はいつ測定したら良いですか?」という質問が、よくあります。
これに対しては、
「自分の食後血糖値のピーク時間に検査したら良いです。」と答えます。
日曜日や休日に
<朝食前・60分後・90分後・120分後・150分後・180分後>
の血糖値を測定して、自分の食後血糖値のピーク上昇の時間帯を知っておくと便利です。
それでは、
健常者および糖尿人における食後血糖値のピーク時間は、
どのくらいなのでしょうか?
答えは、
1)耐糖能正常者24名の食後血糖値のピークは、40分から50分
2)HbA1c8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピーク
3)HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピーク
です。
ピークが、後にずれるほど、耐糖能が良くないと言えるようです。
上記データは慈恵医科大学の西村理明氏の研究結果です。(*)
西村氏はCGMを駆使して血糖の変動を研究しています。
例えば、耐糖能正常者の24人を調べたところ、
朝食後、昼食後、夕食後ともに血糖のピークは、40分から50分の時間帯に収まっていました。
西村氏は、
「スクリーニングの観点では、食後1時間の血糖値を見るのが重要なのは明らか」
とこれまでの検討から述べています。
さらに、治療目標の観点から、糖尿病患者の血糖変化も検証しています。
その結果、HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピークがあったものの、
8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピークがありました。
西村氏は、「管理目標として考える場合にも食後1時間をめどに血糖を測定するのが重要」としています。
現在、75g経口ブドウ糖負荷試験では、
糖尿病の診断としては、負荷後1時間値ではなく、
負荷後2時間値で評価しています。
一方、IDF(国際糖尿病連合)の指針は2011年に改訂され、
「食後高血糖の目標値は食後の時間にかかわらず、160mg/dL未満にする」
と変更されました。
つまり糖尿病合併症予防のためには、食後1時間値と2時間値も含めて
160mg/dl未満が目標となります。
糖尿病の早期発見には、食後2時間血糖値ではなく、
食後1時間血糖値による評価が、有用と考えられます。
私も、糖質制限食を推進する立場としては、
食後1時間血糖値を、IDFの目標のように、160mg/dl未満を目指すのが良いと思います。
スーパー糖質制限食なら、ほとんどの2型糖尿病患者においてそれが可能となります。
なお、自分の食後血糖値のピークは、休みの日などに、一度でよいので、
<食前、食後30分、食後60分、食後90分、食後120分、食後150分、食後180分>
などを測定して、知っておくと便利です。
ピークがわかれば、今後は食後血糖値のピーク時だけ測定すればよいです。
(*)
m3.com
https://www.m3.com/clinical/sanpiryoron/152762
食後血糖値、1時間か2時間か?
江部康二
2023年09月20日 (水)
こんにちは。
「急速な血糖値・HbA1cの改善により、
網膜症の一時的な悪化や眼底出血を起こすことがある」
という研究報告があります。
例えば
【網膜ドットコムのサイト
に以下のQ&Aが載っています
糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫のよくある質問
Q:急に血糖値を下げると糖尿病網膜症が悪化することがあると聞きました。
本当ですか?
A:急激な血糖コントロールは一時的に糖尿病網膜症を悪化させることが
報告されています 1)。
このメカニズムにはまだ不明な点が多いのですが、
一般的に、HbA1cの改善度は1ヵ月に0.5~1%を超えないようにすることが
推奨されています。
急激な血糖コントロールで糖尿病網膜症が悪化するケースに下記があげられます。
糖尿病網膜症で糖尿病が発見されるなど、無治療期間が長い場合
血糖コントロール不良期間が長い場合
腎症の進行により透析導入が間近、あるいは透析導入直後の場合
活動性肝疾患、血液疾患、感染症などの全身疾患を有する場合
高血圧あるいは起立性低血圧を有する場合
妊娠中
高齢者 など
1)The Diabetes Control and Commplications Trial Research Group, Arch Ophthalmol. 1998; 116(7): 874-86.
監修:名古屋市立大学 視覚科学 教授 小椋祐一郎先生】
確かに、インスリン注射やSU剤などにより急速に血糖値が改善した場合、
改善速度が速いほど、網膜症の悪化率が高かったという論文報告があります。
実際に日常臨床で、糖尿病患者を診察しておられる医師においては
経験があることと思われます。
とは言え、一時的な悪化はあっても、
長期的には血糖コントロールが良い方が網膜症にも良いということも報告されています。
それでは 糖質制限食によって、血糖値が急速に改善した場合はどうなのでしょう?
網膜症の悪化や眼底出血の心配はないのでしょうか?
実は当初、私達も糖質制限食でインスリン注射以上に速やかに、
血糖コントロールが良くなるので、このことを懸念していました。
幸い、1999年、高雄病院で糖質制限食による糖尿病治療を開始以来2023年現在まで
24年間の経験で、
糖質制限食による改善では網膜症の悪化はありませんでしたので、
今は全く心配はしていません。
しかし、
(A)インスリン注射やSU剤による急速なHbA1c改善:網膜症悪化や眼底出血あり。
何故、網膜症の悪化や眼底出血があるのか、現時点では原因不明。
(B)糖質制限によるより急速なHbA1c改善:網膜症の悪化なし
こちらも、何故、網膜症が悪化しないのか現時点では理由は不明。
同じようにHbA1cが改善するのに、なぜこうも違うのか、疑問が残ります。
平均血糖値(HbA1c)が同じように良くなるにもかかわらず、
インスリンやSU剤の投与による場合と糖質制限食による場合で、
このように明暗がわかれるのには、必ず理由があるはずです。
それで、以下、あくまでも仮説ですが考察してみました。
さて、今まで、長年にわたって血糖コントロールの評価基準として、
空腹時血糖値とHbA1cが使用されてきました。
しかし、近年の信頼度の高い研究により、
空腹時血糖値とHbA1cがコントロール良好でも、
糖尿病合併症は防げないことがわかってきたのです。
それどころか、糖質を普通に摂取しながら、
インスリン注射やSU剤で厳格に治療すると、
総死亡率が上昇するという信頼度の高いエビデンスが報告されました。(*)
すなわち、食後高血糖と平均血糖変動幅の増大が、最大の酸化ストレスリスクであり、
糖尿病合併症の元凶ということがわかってきたのです。
にもかかわらず、腹時血糖値とHbA1cだけによる評価では、
食後高血糖と平均血糖変動幅の増大は全く知ることができないのです。
人体は、酸化反応と抗酸化反応のバランスがとれていると、正常に機能します。
酸化反応が抗酸化反応を上まわった状態を酸化ストレスといいます。
酸化ストレスが、糖尿病合併症・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー・パーキンソン等、様々な疾病の元凶とされています。
このことは、世界中の医学界において、認められています。
糖質を普通に摂取しながら、インスリンやSU剤で厳格に治療してHbA1cを急速に下げると、
低血糖も起こりやすくなるし、平均血糖変動幅の増大も必ず生じます。
つまり、(A)の場合は、見かけ上はHbA1cは急速に改善したように見えても、
その実態は、「低血糖」と「平均血糖変動幅増大」という
最大の酸化ストレスリスクをともなう『質の悪いHbA1c』だったのです。
従って、網膜症悪化や眼底出血を生じた可能性が高いのです。
一方、(B)の糖質制限食でHbA1cが改善した場合には、
薬も使用していないので、「低血糖」も「平均血糖変動幅増大」もない
『質のいいHbA1c』なのです。
そのため急速なHbA1c改善にもかかわらず、網膜症の悪化がないと考えられます。
これらにより、糖質制限食の場合、急速な血糖値改善にもかかわらず、
網膜症の悪化が生じにくいと考えられます。
既にインスリン注射やSU剤を内服していて、ある時に糖質制限食を開始して、
血糖値・HbA1cが急速に改善していく場合も、
インスリン注射やSU剤の量は基本的に減量されていくし、
代謝全般も改善されていくので、糖尿病網膜症悪化は起こりにくいと思います。
糖質を摂取して、インスリンやSU剤の効能だけに依存して血糖値を下げた場合と、
糖質制限食で薬物に頼らずに自然に血糖値が改善した場合との差、
すなわち「低血糖、食後高血糖、平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクが、
両者で全く異なることがお解りいただけたでしょうか。
なお、過去の高血糖のため、すでに糖尿病網膜症が存在している時は、
糖質制限食で血糖コントロール良好を維持していれば糖尿病網膜症の進行は、
徐々に止まると思います。
そして時間をかけて、ある程度改善する可能性はあります。
しかし、糖質制限食で血糖コントロール良好となっても、
既存の糖尿病網膜症が、メキメキ治るわけではありませんので、念のため。
それから、長期の糖尿病罹病期間があって、血糖コントロールが悪かったけれど、
その時点では網膜症はないと言われていた人が、
糖質制限食を開始して血糖コントロール良好となり、
数ヶ月後眼底検査をしたら軽症単純網膜症が発見された、
というようなことがまれにあります。
これは糖質制限食開始時点で既に潜在的な網膜症はあったのが、
時間的経過で顕在化したもので、高血糖の記憶(**)によるものと思われます。
すなわち糖質制限食で網膜症になったのではなく、
過去の高血糖の借金が顕在化したものと思われます。
以上、まだ仮説ですが、それなりに説得力のある説明であると自負しています。
(*)2011/07/18 の本ブログ記事
「ACCORD試験の死亡リスクと低血糖とSMBGサブ解析2011」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1741.html
をご参照ください。
(**)2010-11-14のブログ
「高血糖の記憶とAGE」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1432.html
をご参照ください。
江部康二
「急速な血糖値・HbA1cの改善により、
網膜症の一時的な悪化や眼底出血を起こすことがある」
という研究報告があります。
例えば
【網膜ドットコムのサイト
に以下のQ&Aが載っています
糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫のよくある質問
Q:急に血糖値を下げると糖尿病網膜症が悪化することがあると聞きました。
本当ですか?
A:急激な血糖コントロールは一時的に糖尿病網膜症を悪化させることが
報告されています 1)。
このメカニズムにはまだ不明な点が多いのですが、
一般的に、HbA1cの改善度は1ヵ月に0.5~1%を超えないようにすることが
推奨されています。
急激な血糖コントロールで糖尿病網膜症が悪化するケースに下記があげられます。
糖尿病網膜症で糖尿病が発見されるなど、無治療期間が長い場合
血糖コントロール不良期間が長い場合
腎症の進行により透析導入が間近、あるいは透析導入直後の場合
活動性肝疾患、血液疾患、感染症などの全身疾患を有する場合
高血圧あるいは起立性低血圧を有する場合
妊娠中
高齢者 など
1)The Diabetes Control and Commplications Trial Research Group, Arch Ophthalmol. 1998; 116(7): 874-86.
監修:名古屋市立大学 視覚科学 教授 小椋祐一郎先生】
確かに、インスリン注射やSU剤などにより急速に血糖値が改善した場合、
改善速度が速いほど、網膜症の悪化率が高かったという論文報告があります。
実際に日常臨床で、糖尿病患者を診察しておられる医師においては
経験があることと思われます。
とは言え、一時的な悪化はあっても、
長期的には血糖コントロールが良い方が網膜症にも良いということも報告されています。
それでは 糖質制限食によって、血糖値が急速に改善した場合はどうなのでしょう?
網膜症の悪化や眼底出血の心配はないのでしょうか?
実は当初、私達も糖質制限食でインスリン注射以上に速やかに、
血糖コントロールが良くなるので、このことを懸念していました。
幸い、1999年、高雄病院で糖質制限食による糖尿病治療を開始以来2023年現在まで
24年間の経験で、
糖質制限食による改善では網膜症の悪化はありませんでしたので、
今は全く心配はしていません。
しかし、
(A)インスリン注射やSU剤による急速なHbA1c改善:網膜症悪化や眼底出血あり。
何故、網膜症の悪化や眼底出血があるのか、現時点では原因不明。
(B)糖質制限によるより急速なHbA1c改善:網膜症の悪化なし
こちらも、何故、網膜症が悪化しないのか現時点では理由は不明。
同じようにHbA1cが改善するのに、なぜこうも違うのか、疑問が残ります。
平均血糖値(HbA1c)が同じように良くなるにもかかわらず、
インスリンやSU剤の投与による場合と糖質制限食による場合で、
このように明暗がわかれるのには、必ず理由があるはずです。
それで、以下、あくまでも仮説ですが考察してみました。
さて、今まで、長年にわたって血糖コントロールの評価基準として、
空腹時血糖値とHbA1cが使用されてきました。
しかし、近年の信頼度の高い研究により、
空腹時血糖値とHbA1cがコントロール良好でも、
糖尿病合併症は防げないことがわかってきたのです。
それどころか、糖質を普通に摂取しながら、
インスリン注射やSU剤で厳格に治療すると、
総死亡率が上昇するという信頼度の高いエビデンスが報告されました。(*)
すなわち、食後高血糖と平均血糖変動幅の増大が、最大の酸化ストレスリスクであり、
糖尿病合併症の元凶ということがわかってきたのです。
にもかかわらず、腹時血糖値とHbA1cだけによる評価では、
食後高血糖と平均血糖変動幅の増大は全く知ることができないのです。
人体は、酸化反応と抗酸化反応のバランスがとれていると、正常に機能します。
酸化反応が抗酸化反応を上まわった状態を酸化ストレスといいます。
酸化ストレスが、糖尿病合併症・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー・パーキンソン等、様々な疾病の元凶とされています。
このことは、世界中の医学界において、認められています。
糖質を普通に摂取しながら、インスリンやSU剤で厳格に治療してHbA1cを急速に下げると、
低血糖も起こりやすくなるし、平均血糖変動幅の増大も必ず生じます。
つまり、(A)の場合は、見かけ上はHbA1cは急速に改善したように見えても、
その実態は、「低血糖」と「平均血糖変動幅増大」という
最大の酸化ストレスリスクをともなう『質の悪いHbA1c』だったのです。
従って、網膜症悪化や眼底出血を生じた可能性が高いのです。
一方、(B)の糖質制限食でHbA1cが改善した場合には、
薬も使用していないので、「低血糖」も「平均血糖変動幅増大」もない
『質のいいHbA1c』なのです。
そのため急速なHbA1c改善にもかかわらず、網膜症の悪化がないと考えられます。
これらにより、糖質制限食の場合、急速な血糖値改善にもかかわらず、
網膜症の悪化が生じにくいと考えられます。
既にインスリン注射やSU剤を内服していて、ある時に糖質制限食を開始して、
血糖値・HbA1cが急速に改善していく場合も、
インスリン注射やSU剤の量は基本的に減量されていくし、
代謝全般も改善されていくので、糖尿病網膜症悪化は起こりにくいと思います。
糖質を摂取して、インスリンやSU剤の効能だけに依存して血糖値を下げた場合と、
糖質制限食で薬物に頼らずに自然に血糖値が改善した場合との差、
すなわち「低血糖、食後高血糖、平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクが、
両者で全く異なることがお解りいただけたでしょうか。
なお、過去の高血糖のため、すでに糖尿病網膜症が存在している時は、
糖質制限食で血糖コントロール良好を維持していれば糖尿病網膜症の進行は、
徐々に止まると思います。
そして時間をかけて、ある程度改善する可能性はあります。
しかし、糖質制限食で血糖コントロール良好となっても、
既存の糖尿病網膜症が、メキメキ治るわけではありませんので、念のため。
それから、長期の糖尿病罹病期間があって、血糖コントロールが悪かったけれど、
その時点では網膜症はないと言われていた人が、
糖質制限食を開始して血糖コントロール良好となり、
数ヶ月後眼底検査をしたら軽症単純網膜症が発見された、
というようなことがまれにあります。
これは糖質制限食開始時点で既に潜在的な網膜症はあったのが、
時間的経過で顕在化したもので、高血糖の記憶(**)によるものと思われます。
すなわち糖質制限食で網膜症になったのではなく、
過去の高血糖の借金が顕在化したものと思われます。
以上、まだ仮説ですが、それなりに説得力のある説明であると自負しています。
(*)2011/07/18 の本ブログ記事
「ACCORD試験の死亡リスクと低血糖とSMBGサブ解析2011」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1741.html
をご参照ください。
(**)2010-11-14のブログ
「高血糖の記憶とAGE」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1432.html
をご参照ください。
江部康二
2023年09月19日 (火)
こんにちは。
2023年11月5日(日)東京都内で、
「健康をセルフマネジメントする時代へ
万病の元『糖尿病・メタボ・生活習慣病』
を解決する糖質制限食」
と題して、一般の方向けの講演会を開催いたします。
講師は、札幌市の西岡第一病院 麻酔科部長の清水泰行先生と私です。
清水先生は、ブログ「ドクターシミズのひとりごと」で、
豊富な文献や知識をもとに
糖質制限食を始めとして様々な情報を日々発信しておられます。
第1部は、私の「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」という題の講演です。
糖質制限食の最新知識と旧石器時代のお話をします。
日本列島にヒトが住み始めたのは旧石器時代からです。
旧石器時代は約38000年前から16000年前までの約22000年間続きました。
ナウマン象、ニホンシカ、イノシシ、ウサギ・・・ などを狩猟してとり、肉食が主でした。
・・・北海道ではマンモスも食べていました。
糖質摂取比率は10%以下でしたでしょう。
当時の日本列島は多くは亜寒帯性の針葉樹林が広がっていて、
植物性の食品は乏しく漁撈も未発達なため、大型哺乳類を主とした狩猟に依存した生活でした。
植物食は自然薯(山芋)、百合根、コケモモ、松の実、山菜などしか、ありませんでした。
私達、日本人は、この肉食を主とした22000年間で、身体を形成したので、
肉食に特化して適合していると考えられます。
スーパー糖質制限食は、この旧石器時代の食生活と同様のPFCの摂取比率です。
米を食べ始めたのは、僅か2500年前の弥生時代からなので、肉食の歴史には遠く及びません。
第2部は、
清水先生に「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」と題して、
お話しいただきます。
講師より
「現代の生活習慣や食事は、人類の本来のものとはかけ離れてしまっています。
人間の代謝は食事と運動で変化します。
食事が間違っていれば、代謝も悪くなり、様々な疾患や症状を起こすでしょう。
糖質制限はかつてない広がりを見せていますが、日本の医療はいまだそれに逆行しています。
医療は日々進歩していると言われています。様々な治療法や薬が開発され、救われた人もいるでしょう。
しかし一方で、様々な病気が激増しています。まさにパンデミックです。
医学教育や医療は病気に対応する方向へ進むだけで、
病気にならないように予防する方向へとはほとんど進んでいません。
薬による検査の数値の正常化を目標とした医療では、
根本原因はそのままにされてしまうので、健康にはなれません。
健康を取り戻すためには、人間の本来の初期設定に戻す必要があります。
医療の常識や定説を覆し、根本から健康になるためにはどうすれば良いのか?
様々なエビデンスを提示して、糖質過剰摂取の危険性、
糖質制限で得られる大きなメリットなどについてお話させていただきます。」
ブログ読者の皆さん是非、東京講演会にご参加頂ければ、幸いです。
江部康二
以下事務局からのお知らせです。
*************
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきまして、 ありがとうございます。
11月5日(日)東京都内で、「健康をセルフマネジメントする時代へ 万病の元『糖尿病・メタボ・生活習慣病』を解決する糖質制限食」と題して、一般の方向けの講演会を開催いたします。
講師は、札幌市の西岡第一病院 麻酔科部長の清水泰行先生と当会理事長の江部康二医師です。
第1部は、江部理事長が「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」 と題してお話しします。
第2部は、清水先生に「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」と題して、お話しいただきます。
清水先生は、健康や医療に関する定説に疑問を抱き、あまたの論文を参照しつつ考察を重ねて、ブログ「ドクターシミズのひとりごと」で精力的に情報を発信しておられ、『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』(光文社新書)等のご著書も上梓されています。
また、糖質制限を実践されながら、100㎞のウルトラマラソンも走るマラソンランナーでもいらっしゃいます。
糖尿病・メタボをはじめ生活習慣病でお困りの方、健康を取り戻したい方、健康を上手にセルフマネジメントされたい方、必聴の内容です。
関東にお住まいの方をはじめ、たくさんのご参加をお待ちしております。
*当日講演会終了後に、賛助会員交流会を開催いたします。
☆講演会・賛助会員交流会情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
///////////////////ご案内/////////////////////
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催 講演会(東京)
~健康をセルフマネジメントする時代へ~
万病の元「糖尿病・メタボ・生活習慣病」を解決する糖質制限食
◆日程:2023年11月5日(日)13:40~16:30頃 ※開場・受付は、13:20~
◆会場: WATERRAS COMMON 3F「ワテラスコモンホール」
東京都千代田区神田淡路町2丁目101番地
http://www.waterrascommon.com/access.html
◆受講費:賛助会員 2,800円 / 一般(会員の方以外)3,300円
◆内容: 第1部・第2部は講演各60分程度、最後に質疑応答を予定しております。
・第1部
「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」
講師: 江部 康二 医師 / (一財)高雄病院・(一社)日本糖質制限医療推進協会理事長
・第2部
「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」
講師: 清水 泰行 医師 / 社会医療法人仁陽会 西岡第一病院 麻酔科部長
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<清水先生より>
現代の生活習慣や食事は、人類の本来のものとはかけ離れてしまっています。
人間の代謝は食事と運動で変化します。
食事が間違っていれば、代謝も悪くなり、様々な疾患や症状を起こすでしょう。
糖質制限はかつてない広がりを見せていますが、日本の医療はいまだそれに逆行しています。
医療は日々進歩していると言われています。様々な治療法や薬が開発され、救われた人もいるでしょう。
しかし一方で、様々な病気が激増しています。まさにパンデミックです。
医学教育や医療は病気に対応する方向へ進むだけで、病気にならないように予防する方向へとはほとんど進んでいません。
薬による検査の数値の正常化を目標とした医療では、根本原因はそのままにされてしまうので、健康にはなれません。
健康を取り戻すためには、人間の本来の初期設定に戻す必要があります。
医療の常識や定説を覆し、根本から健康になるためにはどうすれば良いのか?
様々なエビデンスを提示して、糖質過剰摂取の危険性、糖質制限で得られる大きなメリットなどについてお話させていただきます。
<清水先生ご略歴>
北海道大学医学部卒業。
『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』 (光文社新書)など、これまでに3冊の著書を上梓している。
麻酔、ペインクリニック(痛み専門の治療)だけでなく、患者さんの健康的な食事の相談、糖質制限にも積極的に対応。
自身のブログ(*)では、病気および健康や運動、薬の副作用等の多くの情報を発信し続けている。
ウルトラマラソン(100km)も走るマラソンランナーでもある。
*「ドクターシミズのひとりごと」 https://promea2014.com/blog/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
◆お申し込み方法:
★賛助会員の方:
事務局へメールにて、参加ご希望のイベント名をご明記の上、お申し込み下さい。
※複数名でお申し込みの場合は、全員のご氏名をご明記下さい。
※領収書の発行をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会出席のお問い合わせ」を選択いただき、「通信」欄に参加ご希望のイベント名(11/5東京講演会、賛助会員交流会)をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(会員以外の方)で、講演会への参加のみご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-gen
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。
・当日は直接各会場へお越し頂き、受付にてお名前をお伝えください。
・講演会のキャンセルは11月2日(木)までに、交流会のキャンセルは10月31日(火)までに事務局へメールにてご連絡願います。
これら以降のご返金は対応致しかねますので、予めご了承ください。
2023年11月5日(日)東京都内で、
「健康をセルフマネジメントする時代へ
万病の元『糖尿病・メタボ・生活習慣病』
を解決する糖質制限食」
と題して、一般の方向けの講演会を開催いたします。
講師は、札幌市の西岡第一病院 麻酔科部長の清水泰行先生と私です。
清水先生は、ブログ「ドクターシミズのひとりごと」で、
豊富な文献や知識をもとに
糖質制限食を始めとして様々な情報を日々発信しておられます。
第1部は、私の「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」という題の講演です。
糖質制限食の最新知識と旧石器時代のお話をします。
日本列島にヒトが住み始めたのは旧石器時代からです。
旧石器時代は約38000年前から16000年前までの約22000年間続きました。
ナウマン象、ニホンシカ、イノシシ、ウサギ・・・ などを狩猟してとり、肉食が主でした。
・・・北海道ではマンモスも食べていました。
糖質摂取比率は10%以下でしたでしょう。
当時の日本列島は多くは亜寒帯性の針葉樹林が広がっていて、
植物性の食品は乏しく漁撈も未発達なため、大型哺乳類を主とした狩猟に依存した生活でした。
植物食は自然薯(山芋)、百合根、コケモモ、松の実、山菜などしか、ありませんでした。
私達、日本人は、この肉食を主とした22000年間で、身体を形成したので、
肉食に特化して適合していると考えられます。
スーパー糖質制限食は、この旧石器時代の食生活と同様のPFCの摂取比率です。
米を食べ始めたのは、僅か2500年前の弥生時代からなので、肉食の歴史には遠く及びません。
第2部は、
清水先生に「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」と題して、
お話しいただきます。
講師より
「現代の生活習慣や食事は、人類の本来のものとはかけ離れてしまっています。
人間の代謝は食事と運動で変化します。
食事が間違っていれば、代謝も悪くなり、様々な疾患や症状を起こすでしょう。
糖質制限はかつてない広がりを見せていますが、日本の医療はいまだそれに逆行しています。
医療は日々進歩していると言われています。様々な治療法や薬が開発され、救われた人もいるでしょう。
しかし一方で、様々な病気が激増しています。まさにパンデミックです。
医学教育や医療は病気に対応する方向へ進むだけで、
病気にならないように予防する方向へとはほとんど進んでいません。
薬による検査の数値の正常化を目標とした医療では、
根本原因はそのままにされてしまうので、健康にはなれません。
健康を取り戻すためには、人間の本来の初期設定に戻す必要があります。
医療の常識や定説を覆し、根本から健康になるためにはどうすれば良いのか?
様々なエビデンスを提示して、糖質過剰摂取の危険性、
糖質制限で得られる大きなメリットなどについてお話させていただきます。」
ブログ読者の皆さん是非、東京講演会にご参加頂ければ、幸いです。
江部康二
以下事務局からのお知らせです。
*************
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきまして、 ありがとうございます。
11月5日(日)東京都内で、「健康をセルフマネジメントする時代へ 万病の元『糖尿病・メタボ・生活習慣病』を解決する糖質制限食」と題して、一般の方向けの講演会を開催いたします。
講師は、札幌市の西岡第一病院 麻酔科部長の清水泰行先生と当会理事長の江部康二医師です。
第1部は、江部理事長が「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」 と題してお話しします。
第2部は、清水先生に「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」と題して、お話しいただきます。
清水先生は、健康や医療に関する定説に疑問を抱き、あまたの論文を参照しつつ考察を重ねて、ブログ「ドクターシミズのひとりごと」で精力的に情報を発信しておられ、『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』(光文社新書)等のご著書も上梓されています。
また、糖質制限を実践されながら、100㎞のウルトラマラソンも走るマラソンランナーでもいらっしゃいます。
糖尿病・メタボをはじめ生活習慣病でお困りの方、健康を取り戻したい方、健康を上手にセルフマネジメントされたい方、必聴の内容です。
関東にお住まいの方をはじめ、たくさんのご参加をお待ちしております。
*当日講演会終了後に、賛助会員交流会を開催いたします。
☆講演会・賛助会員交流会情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
///////////////////ご案内/////////////////////
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催 講演会(東京)
~健康をセルフマネジメントする時代へ~
万病の元「糖尿病・メタボ・生活習慣病」を解決する糖質制限食
◆日程:2023年11月5日(日)13:40~16:30頃 ※開場・受付は、13:20~
◆会場: WATERRAS COMMON 3F「ワテラスコモンホール」
東京都千代田区神田淡路町2丁目101番地
http://www.waterrascommon.com/access.html
◆受講費:賛助会員 2,800円 / 一般(会員の方以外)3,300円
◆内容: 第1部・第2部は講演各60分程度、最後に質疑応答を予定しております。
・第1部
「糖尿病治療のベストな選択!データと歴史が示す糖質制限食の有効性」
講師: 江部 康二 医師 / (一財)高雄病院・(一社)日本糖質制限医療推進協会理事長
・第2部
「医療では健康は得られない ~医療の常識は本当か?~」
講師: 清水 泰行 医師 / 社会医療法人仁陽会 西岡第一病院 麻酔科部長
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<清水先生より>
現代の生活習慣や食事は、人類の本来のものとはかけ離れてしまっています。
人間の代謝は食事と運動で変化します。
食事が間違っていれば、代謝も悪くなり、様々な疾患や症状を起こすでしょう。
糖質制限はかつてない広がりを見せていますが、日本の医療はいまだそれに逆行しています。
医療は日々進歩していると言われています。様々な治療法や薬が開発され、救われた人もいるでしょう。
しかし一方で、様々な病気が激増しています。まさにパンデミックです。
医学教育や医療は病気に対応する方向へ進むだけで、病気にならないように予防する方向へとはほとんど進んでいません。
薬による検査の数値の正常化を目標とした医療では、根本原因はそのままにされてしまうので、健康にはなれません。
健康を取り戻すためには、人間の本来の初期設定に戻す必要があります。
医療の常識や定説を覆し、根本から健康になるためにはどうすれば良いのか?
様々なエビデンスを提示して、糖質過剰摂取の危険性、糖質制限で得られる大きなメリットなどについてお話させていただきます。
<清水先生ご略歴>
北海道大学医学部卒業。
『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』 (光文社新書)など、これまでに3冊の著書を上梓している。
麻酔、ペインクリニック(痛み専門の治療)だけでなく、患者さんの健康的な食事の相談、糖質制限にも積極的に対応。
自身のブログ(*)では、病気および健康や運動、薬の副作用等の多くの情報を発信し続けている。
ウルトラマラソン(100km)も走るマラソンランナーでもある。
*「ドクターシミズのひとりごと」 https://promea2014.com/blog/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
◆お申し込み方法:
★賛助会員の方:
事務局へメールにて、参加ご希望のイベント名をご明記の上、お申し込み下さい。
※複数名でお申し込みの場合は、全員のご氏名をご明記下さい。
※領収書の発行をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会出席のお問い合わせ」を選択いただき、「通信」欄に参加ご希望のイベント名(11/5東京講演会、賛助会員交流会)をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(会員以外の方)で、講演会への参加のみご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-gen
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。
・当日は直接各会場へお越し頂き、受付にてお名前をお伝えください。
・講演会のキャンセルは11月2日(木)までに、交流会のキャンセルは10月31日(火)までに事務局へメールにてご連絡願います。
これら以降のご返金は対応致しかねますので、予めご了承ください。
2023年09月18日 (月)
【23/09/16としの
ケトン体ケトン体について詳細なお返事誠に有難うございます!
SGLT 2阻害剤投与にて、どれくらいケトン体が上昇しているのか、興味が湧きます。
SGLT 2阻害投与中の方でも、私の患者さんでは尿ケトン体は陰性です。
(患者さんで1型の方が「時々+」になります。その時は逆にインスリン不足または糖質不足を留意しています)
先生は尿ケトン体は陽性でしょうか?
血中ケトン体が正常を超えていたら、尿ケトン体は陽性になるものでしょうか?
何回も申し訳ありません。
よろしければお返事お願いします。】
としのさん
私の尿ケトン体は、現時点では陰性です。
スーパー糖質制限食開始後の約3か月間くらいは、陽性でしたが、
その後陰性となりました。体内で効率よくケトン体を利用するようになったからだと思います。
(1)
スーパー糖質制限食では、1回の食事の糖質量を20g以下を目指します。
これは、糖尿病患者さんでも、過半数において、
食後の血糖値が160~180mg/dlを超えないようにという意図で設定しています。
言い換えれば、境界型やごく軽症の糖尿病なら、
1回の食事の糖質量を30~40gとしても
食後血糖値が160~180mg/dlを超えないならば、許容できるということです。
糖尿病ではなくて、ダイエット目的なら、
例えば、スーパー糖質制限食で、5kg減量して目標達成なので
その後はプチで体重をキープするといったパターンが考えられます。
(2)
ケトン食(Fが87%、PとCで合わせて13%)
スーパー糖質制限食(P32%、F56%、C12%)
です。
ケトン食は治療食です。
スーパー糖質制限食は治療食兼健康食です。
以下をご参照頂ければ幸いです。
古典的ケトン食は、元々、
「小児難治性てんかん」に対する治療食でした。
てんかん治療のための内服薬が、効果がないとき、
ケトン食が導入されて、かなりの効果をあげてきました。
ケトン食療法には、低血糖、嘔気・嘔吐、便秘・下痢、体重減少、
活動性低下などが副作用として生じる場合があります。
てんかん情報センター
http://epilepsy-info.jp/question/faq7-3/
一定の副作用はあり得ますが、
「GLUT1欠損症」においては、ケトン食が唯一の治療法です。
脳細胞の糖受容体は、GLUT1ですが、
その働きが良くない場合は、脳はブドウ糖をエネルギー源として
上手く利用できないので、失神、てんかん発作、発育不全などを生じます。
しかし、ケトン食なら脳はケトン体をエネルギー源とするので
普通に発育・成長が可能です。
ケトン食は、
メイヨークリニック(米国)のワイルダー博士によって1921年に作られました。
世界的に権威のある治療ガイドラインの
COCHRANE LIBRARY(コクランライブラリー)10年版と、
NICE(英国国立医療技術評価機構)が発行するガイドライン11年版で、
ケトン食療法は難治性小児てんかんの治療法に採用されています。
また日本でも2016年4月、難治性てんかん患者を対象に保険適用になりました。
<スーパー糖質制限食とケトン食の違い、それぞれの役割>
スーパー糖質制限食とケトン食の違い、役割を考えてみます。
<スーパー糖質制限食>
スーパー糖質制限食とは、三食とも主食なしのおかずばかりという食事です。
スーパー糖質制限食は、糖尿病やメタボなど
さまざまな生活習慣病の予防と治療に効果があります。
高雄病院給食メニューの平均値では、
スーパー糖質制限食は糖質12%、脂質56%、タンパク質32%の割合です。
糖質制限で糖質摂取が相対的に減少すると、
脂肪の分解が進んで肝臓がケトン体を作り、血液や尿の中に放出します。
高雄病院のスーパー糖質制限食を食べると、
総ケトン体の数値が400~1200~2000μmol/Lほどになる人が多いようです。
総ケトン体の基準値は26~122μmol/L です。
私自身も、いつも同じような食事(スーパー糖質制限食)をしているつもりなのですが、
総ケトン体値は、200~1200まで結構ばらつきます。
ココナッツオイルやMCTオイルなど中鎖脂肪酸を摂取すると
ケトン体は上昇しやすくなります。
またケトン体の日内変動もあるようです。
ケトン食レベルの食事では、ケトン体数値は確実に上昇します。
<ケトン食>
ケトン食は、本来は難治性てんかんの子供に用いられている治療食で、
究極の糖質制限食です。
米やパンなど炭水化物をできるだけ食べず、
砂糖の代わりに人工甘味料を使い、
卵、豆腐、肉、魚主体の食事に食用油を添加します。
そして「脂肪:非脂肪(たんぱく質+糖質)」の値を、
3:1~4:1に保つことを目標とします。
古典的ケトン食は「脂肪:非脂肪(たんぱく質+糖質)」を表すケトン比が3:1です。
例えば、2歳くらいで930kcal/日なら、
「脂質90gに対し、非脂肪(たんぱく質+糖質)は30g」の割合です。
脂肪810kcal、非脂肪120kcalなので、脂質摂取比率は約87%と高い値です。
ケトン食を実践すると、血中総ケトン体は4000~5000μmol/Lレベル、
基準値の40~50倍になりますが、インスリン作用が保たれていれば、
ケトアシドーシスにはならず、基本、安全です。
<ケトン食とスーパー糖質制限食の違い>
一言でいうと、
ケトン食は「治療食」、
スーパー糖質制限食は「治療食兼健康食」です。
ケトン食で血中総ケトン体が4000~5000μM/Lの高い値になると、
尿中ケトン体も常に陽性になります。
つまり、体内で利用しきれない血中ケトン体が尿中に出続けるということです。
ここまで高濃度のケトン体値は、人類の祖先もあまり経験したことがないので、
余剰の血中ケトン体が、尿中に排泄されるわけです。
スーパー糖質制限食の場合、当初は尿中ケトン体は陽性ですが、
1~3カ月ほどで陰性になります。
血中総ケトン体は400~1200~2000μM/Lほどで、
心筋や骨格筋、体細胞がしっかりケトン体を利用し、
腎臓の再吸収効率も良くなるので、尿中に排泄されなくなります。
血中ケトン体がすべて体内で利用されるのです。
高雄病院の給食の平均値では、スーパー糖質制限食の脂質摂取比率は56%、
たんぱく質は32%、糖質は12%です。
雑食である現世人類<ホモ・サピエンス>が狩猟・採集時代に食べていたものを
目安にした糖尿病の治療食で、
その本質は人類本来の食事、人類の健康食と言うことができます。
すなわち、糖尿病や肥満以外にも、ほとんどの生活習慣病に有効です。
このことを思えば、
実は<糖質の頻回過剰摂取とそれに伴うインスリンの頻回過剰分泌>が生活習慣病の元凶と思われます。
これに対し、ケトン食はあくまでも治療食であり、人類本来の食事ではありません。
ケトン食は、糖質制限を徹底させたもので、
スーパー糖質制限食よりさらに、糖質摂取は少なくなります。
嘔吐(おうと)、下痢、便秘など副作用も報告されています。
安全に行うにはケトン食に詳しい医師や栄養士の指導が必要です。
<結論>
(1)ケトン食は「治療食」
(2)スーパー糖質制限食は「治療食」かつ「人類の健康食」です。
江部康二
ケトン体ケトン体について詳細なお返事誠に有難うございます!
SGLT 2阻害剤投与にて、どれくらいケトン体が上昇しているのか、興味が湧きます。
SGLT 2阻害投与中の方でも、私の患者さんでは尿ケトン体は陰性です。
(患者さんで1型の方が「時々+」になります。その時は逆にインスリン不足または糖質不足を留意しています)
先生は尿ケトン体は陽性でしょうか?
血中ケトン体が正常を超えていたら、尿ケトン体は陽性になるものでしょうか?
何回も申し訳ありません。
よろしければお返事お願いします。】
としのさん
私の尿ケトン体は、現時点では陰性です。
スーパー糖質制限食開始後の約3か月間くらいは、陽性でしたが、
その後陰性となりました。体内で効率よくケトン体を利用するようになったからだと思います。
(1)
スーパー糖質制限食では、1回の食事の糖質量を20g以下を目指します。
これは、糖尿病患者さんでも、過半数において、
食後の血糖値が160~180mg/dlを超えないようにという意図で設定しています。
言い換えれば、境界型やごく軽症の糖尿病なら、
1回の食事の糖質量を30~40gとしても
食後血糖値が160~180mg/dlを超えないならば、許容できるということです。
糖尿病ではなくて、ダイエット目的なら、
例えば、スーパー糖質制限食で、5kg減量して目標達成なので
その後はプチで体重をキープするといったパターンが考えられます。
(2)
ケトン食(Fが87%、PとCで合わせて13%)
スーパー糖質制限食(P32%、F56%、C12%)
です。
ケトン食は治療食です。
スーパー糖質制限食は治療食兼健康食です。
以下をご参照頂ければ幸いです。
古典的ケトン食は、元々、
「小児難治性てんかん」に対する治療食でした。
てんかん治療のための内服薬が、効果がないとき、
ケトン食が導入されて、かなりの効果をあげてきました。
ケトン食療法には、低血糖、嘔気・嘔吐、便秘・下痢、体重減少、
活動性低下などが副作用として生じる場合があります。
てんかん情報センター
http://epilepsy-info.jp/question/faq7-3/
一定の副作用はあり得ますが、
「GLUT1欠損症」においては、ケトン食が唯一の治療法です。
脳細胞の糖受容体は、GLUT1ですが、
その働きが良くない場合は、脳はブドウ糖をエネルギー源として
上手く利用できないので、失神、てんかん発作、発育不全などを生じます。
しかし、ケトン食なら脳はケトン体をエネルギー源とするので
普通に発育・成長が可能です。
ケトン食は、
メイヨークリニック(米国)のワイルダー博士によって1921年に作られました。
世界的に権威のある治療ガイドラインの
COCHRANE LIBRARY(コクランライブラリー)10年版と、
NICE(英国国立医療技術評価機構)が発行するガイドライン11年版で、
ケトン食療法は難治性小児てんかんの治療法に採用されています。
また日本でも2016年4月、難治性てんかん患者を対象に保険適用になりました。
<スーパー糖質制限食とケトン食の違い、それぞれの役割>
スーパー糖質制限食とケトン食の違い、役割を考えてみます。
<スーパー糖質制限食>
スーパー糖質制限食とは、三食とも主食なしのおかずばかりという食事です。
スーパー糖質制限食は、糖尿病やメタボなど
さまざまな生活習慣病の予防と治療に効果があります。
高雄病院給食メニューの平均値では、
スーパー糖質制限食は糖質12%、脂質56%、タンパク質32%の割合です。
糖質制限で糖質摂取が相対的に減少すると、
脂肪の分解が進んで肝臓がケトン体を作り、血液や尿の中に放出します。
高雄病院のスーパー糖質制限食を食べると、
総ケトン体の数値が400~1200~2000μmol/Lほどになる人が多いようです。
総ケトン体の基準値は26~122μmol/L です。
私自身も、いつも同じような食事(スーパー糖質制限食)をしているつもりなのですが、
総ケトン体値は、200~1200まで結構ばらつきます。
ココナッツオイルやMCTオイルなど中鎖脂肪酸を摂取すると
ケトン体は上昇しやすくなります。
またケトン体の日内変動もあるようです。
ケトン食レベルの食事では、ケトン体数値は確実に上昇します。
<ケトン食>
ケトン食は、本来は難治性てんかんの子供に用いられている治療食で、
究極の糖質制限食です。
米やパンなど炭水化物をできるだけ食べず、
砂糖の代わりに人工甘味料を使い、
卵、豆腐、肉、魚主体の食事に食用油を添加します。
そして「脂肪:非脂肪(たんぱく質+糖質)」の値を、
3:1~4:1に保つことを目標とします。
古典的ケトン食は「脂肪:非脂肪(たんぱく質+糖質)」を表すケトン比が3:1です。
例えば、2歳くらいで930kcal/日なら、
「脂質90gに対し、非脂肪(たんぱく質+糖質)は30g」の割合です。
脂肪810kcal、非脂肪120kcalなので、脂質摂取比率は約87%と高い値です。
ケトン食を実践すると、血中総ケトン体は4000~5000μmol/Lレベル、
基準値の40~50倍になりますが、インスリン作用が保たれていれば、
ケトアシドーシスにはならず、基本、安全です。
<ケトン食とスーパー糖質制限食の違い>
一言でいうと、
ケトン食は「治療食」、
スーパー糖質制限食は「治療食兼健康食」です。
ケトン食で血中総ケトン体が4000~5000μM/Lの高い値になると、
尿中ケトン体も常に陽性になります。
つまり、体内で利用しきれない血中ケトン体が尿中に出続けるということです。
ここまで高濃度のケトン体値は、人類の祖先もあまり経験したことがないので、
余剰の血中ケトン体が、尿中に排泄されるわけです。
スーパー糖質制限食の場合、当初は尿中ケトン体は陽性ですが、
1~3カ月ほどで陰性になります。
血中総ケトン体は400~1200~2000μM/Lほどで、
心筋や骨格筋、体細胞がしっかりケトン体を利用し、
腎臓の再吸収効率も良くなるので、尿中に排泄されなくなります。
血中ケトン体がすべて体内で利用されるのです。
高雄病院の給食の平均値では、スーパー糖質制限食の脂質摂取比率は56%、
たんぱく質は32%、糖質は12%です。
雑食である現世人類<ホモ・サピエンス>が狩猟・採集時代に食べていたものを
目安にした糖尿病の治療食で、
その本質は人類本来の食事、人類の健康食と言うことができます。
すなわち、糖尿病や肥満以外にも、ほとんどの生活習慣病に有効です。
このことを思えば、
実は<糖質の頻回過剰摂取とそれに伴うインスリンの頻回過剰分泌>が生活習慣病の元凶と思われます。
これに対し、ケトン食はあくまでも治療食であり、人類本来の食事ではありません。
ケトン食は、糖質制限を徹底させたもので、
スーパー糖質制限食よりさらに、糖質摂取は少なくなります。
嘔吐(おうと)、下痢、便秘など副作用も報告されています。
安全に行うにはケトン食に詳しい医師や栄養士の指導が必要です。
<結論>
(1)ケトン食は「治療食」
(2)スーパー糖質制限食は「治療食」かつ「人類の健康食」です。
江部康二
2023年09月16日 (土)
こんにちは。
寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑
旧石器時代 13歳
縄文時代 15歳
弥生時代 18~28歳
古墳時代 25歳未満
飛鳥・奈良時代 20歳未満
平安時代 30~40歳
鎌倉時代 24歳
室町時代 16歳
安土桃山時代 34~35歳
江戸時代 31.7歳
明治時代 44歳
大正時代 43歳
昭和時代 31歳
平成時代 83歳
戦時中:昭和20年は、31歳
戦後:昭和22年、50代超え
昭和46年、70代
『寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑』 やまぐちかおり (イラスト) いろは出版 (編著)より引用
上記は、小学校の教科書に記載されている定番の各時代の平均寿命です。
基本的には、昔になるほど短命です。
つまり、狩猟採集時代より、農耕時代のほうが、平均寿命は長いです。
しかし、平均寿命には<食糧事情><周産期死亡><飲料水と感染><環境>などが、
大きく関わってくるので、単純な比較にはは意味がありません
そこで、今回は
『狩猟採集民は農耕民より長命で健康だった』という古栄養学の研究を紹介します。
古代人の食生活を考察し、その食生活が当時の人間集団の存続に
どんな役割を果たしていたかを知ろうとする学問が
パレオ・ニュートリション(古栄養学)です。
骨で見分ける古代人の生活ぶり
http://www.wound-treatment.jp/dr/glucide_data/kagaku-asahi_1981.htm
科学朝日,41巻12号,1981年 記載の
カナダ・マックギル大教授/人類学 井川史子氏の論文
の要旨が以下の記事です。
本文は結構、長文ですが、興味ある人は、是非読んでみて下さい。
A)
ケンタッキー州,インディアン・ノール貝塚出土の285体の人骨
紀元前3400年から同2000年ころ
狩猟,漁労,植物採取をしていた人々の残した貝塚で出土
B)
ケンタッキー州,ハーディン・ビレッジ遺構出土の人骨296体
西暦1500年から1675年ころ
トウモロコシ,豆類,カボチャ類を栽培した人々が住んだ村落で出土
比較研究の条件として、
①一定数以上の人骨資料があること
②人種的条件が同じであること
③環境的条件が同じであること
④ヨーロッパ伝来の疾病が新しい要因として入っていないこと
が、前提となっています。
すなわちハーディン・ビレッジの居住期間中、
ヨーロッパ人の侵入はこの地域に関する限りはなしという前提です。
米国、ケンタッキー州で出土した、上記の①②③④の条件を全て満たす
A)とB)の人骨を比較した研究です。
狩猟・漁労・採集が生業の人骨285体と 、
トウモロコシ・豆類・カボチャ栽培が生業の人骨296体を比較したところ、
狩猟採集民のほうが、農耕民より長命であったことが判明しました。
男女ともにインディアン・ノールの狩猟採取民の方が長命でした。
死亡年齢で特に対照的なのは、4歳未満の小児死亡率の分布でした。
インディアン・ノールでは、70%が新生児と12ヶ月未満の乳児でしたが、
狩猟採集民は、新生児の間引きをする習慣があるので、
その影響があると考えられます。
一方ハーディン・ビレッジではその逆で、1~3歳の幼児が60%に達っしました。
すなわち、農耕民のほうは、離乳期に入ってからが危機であることが明らかです。
ハーディン・ビレッジの農耕民はトウモロコシ粉を水溶きしたようなものを
離乳食に用いたと考えられます。
それが生涯を通じての栄養的欠陥の始まりになったと思われます。
現代でも、アフリカや中央アメリカの農耕社会では
柔らかいでんぷん質の食事が離乳食として与えられると、
下痢が始まり、各種の細菌侵入による疾患が起こり、
タンパク質欠乏症を示すことが多いとされています。
ハーディン・ビレッジの農耕民でも同様のパターンが生じて、
短命に繋がった可能性があります。
また、
40歳以上はインディアン・ノールの狩猟採取民では12%くらいでしたが
ハーディン・ビレッジでは 5%しかなく、
さらに50歳以上になると前者は5%くらいあるのに対して、
後者は1.25%くらいしかいませんでした。
即ち、トウモロコシが主食の農耕民は、1~3歳の幼児が大量に死亡するだけでなく長生きの人も、
狩猟・採集民に比し、極端に少なかったのです。
近年まで狩猟・採集に頼る生活をしていたアフリカのブッシュマンやオーストラリア原住民のアボリジニについても研究が進み、
彼らの生活は、農耕民に比べて労働時間は短く、栄養上のバランスもよく、
健康状態もすぐれているらしいことが明らかになりました。
ただ、狩猟採集生活の欠陥は、
一定面積内では居住可能な人口が制限されることです。
農耕が始まって、土地に定着する生活が始まると人口密度が上昇していきます。
その増えた人口のエネルギー源として、
最も確実に手に入り定期的に収穫できて保存もできる穀物(小麦、米、トウモロコシなど)」に依存するようになったのは
必然的なことと言えます。
しかしながら、穀物には、糖質はタップリ含まれていますが、
タンパク質や脂質が不足しています。
必須アミノ酸や必須脂肪酸が不足することで、免疫力が低下します。
そうなると病気に対する抵抗力も低下して、病気に感染る機会も増えて、
狩猟・採取時代より不健康になっていったと考えられます。
<人体の構成成分>
水分:60~70%
タンパク質:15~20%
脂肪:13~20%
ミネラル:5~6%
糖質:1%以下
人体の構成成分として、タンパク質と脂質はとても重要ですが、
糖質はなんと1%以下です。
そして必須脂肪酸と必須アミノ酸はありますが、必須糖質はないのです。
摂取糖質がゼロでも、肝臓や腎臓で、アミノ酸やグリセロールや乳酸から
ブドウ糖を産生するので、大丈夫なのです。
江部康二
寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑
旧石器時代 13歳
縄文時代 15歳
弥生時代 18~28歳
古墳時代 25歳未満
飛鳥・奈良時代 20歳未満
平安時代 30~40歳
鎌倉時代 24歳
室町時代 16歳
安土桃山時代 34~35歳
江戸時代 31.7歳
明治時代 44歳
大正時代 43歳
昭和時代 31歳
平成時代 83歳
戦時中:昭和20年は、31歳
戦後:昭和22年、50代超え
昭和46年、70代
『寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑』 やまぐちかおり (イラスト) いろは出版 (編著)より引用
上記は、小学校の教科書に記載されている定番の各時代の平均寿命です。
基本的には、昔になるほど短命です。
つまり、狩猟採集時代より、農耕時代のほうが、平均寿命は長いです。
しかし、平均寿命には<食糧事情><周産期死亡><飲料水と感染><環境>などが、
大きく関わってくるので、単純な比較にはは意味がありません
そこで、今回は
『狩猟採集民は農耕民より長命で健康だった』という古栄養学の研究を紹介します。
古代人の食生活を考察し、その食生活が当時の人間集団の存続に
どんな役割を果たしていたかを知ろうとする学問が
パレオ・ニュートリション(古栄養学)です。
骨で見分ける古代人の生活ぶり
http://www.wound-treatment.jp/dr/glucide_data/kagaku-asahi_1981.htm
科学朝日,41巻12号,1981年 記載の
カナダ・マックギル大教授/人類学 井川史子氏の論文
の要旨が以下の記事です。
本文は結構、長文ですが、興味ある人は、是非読んでみて下さい。
A)
ケンタッキー州,インディアン・ノール貝塚出土の285体の人骨
紀元前3400年から同2000年ころ
狩猟,漁労,植物採取をしていた人々の残した貝塚で出土
B)
ケンタッキー州,ハーディン・ビレッジ遺構出土の人骨296体
西暦1500年から1675年ころ
トウモロコシ,豆類,カボチャ類を栽培した人々が住んだ村落で出土
比較研究の条件として、
①一定数以上の人骨資料があること
②人種的条件が同じであること
③環境的条件が同じであること
④ヨーロッパ伝来の疾病が新しい要因として入っていないこと
が、前提となっています。
すなわちハーディン・ビレッジの居住期間中、
ヨーロッパ人の侵入はこの地域に関する限りはなしという前提です。
米国、ケンタッキー州で出土した、上記の①②③④の条件を全て満たす
A)とB)の人骨を比較した研究です。
狩猟・漁労・採集が生業の人骨285体と 、
トウモロコシ・豆類・カボチャ栽培が生業の人骨296体を比較したところ、
狩猟採集民のほうが、農耕民より長命であったことが判明しました。
男女ともにインディアン・ノールの狩猟採取民の方が長命でした。
死亡年齢で特に対照的なのは、4歳未満の小児死亡率の分布でした。
インディアン・ノールでは、70%が新生児と12ヶ月未満の乳児でしたが、
狩猟採集民は、新生児の間引きをする習慣があるので、
その影響があると考えられます。
一方ハーディン・ビレッジではその逆で、1~3歳の幼児が60%に達っしました。
すなわち、農耕民のほうは、離乳期に入ってからが危機であることが明らかです。
ハーディン・ビレッジの農耕民はトウモロコシ粉を水溶きしたようなものを
離乳食に用いたと考えられます。
それが生涯を通じての栄養的欠陥の始まりになったと思われます。
現代でも、アフリカや中央アメリカの農耕社会では
柔らかいでんぷん質の食事が離乳食として与えられると、
下痢が始まり、各種の細菌侵入による疾患が起こり、
タンパク質欠乏症を示すことが多いとされています。
ハーディン・ビレッジの農耕民でも同様のパターンが生じて、
短命に繋がった可能性があります。
また、
40歳以上はインディアン・ノールの狩猟採取民では12%くらいでしたが
ハーディン・ビレッジでは 5%しかなく、
さらに50歳以上になると前者は5%くらいあるのに対して、
後者は1.25%くらいしかいませんでした。
即ち、トウモロコシが主食の農耕民は、1~3歳の幼児が大量に死亡するだけでなく長生きの人も、
狩猟・採集民に比し、極端に少なかったのです。
近年まで狩猟・採集に頼る生活をしていたアフリカのブッシュマンやオーストラリア原住民のアボリジニについても研究が進み、
彼らの生活は、農耕民に比べて労働時間は短く、栄養上のバランスもよく、
健康状態もすぐれているらしいことが明らかになりました。
ただ、狩猟採集生活の欠陥は、
一定面積内では居住可能な人口が制限されることです。
農耕が始まって、土地に定着する生活が始まると人口密度が上昇していきます。
その増えた人口のエネルギー源として、
最も確実に手に入り定期的に収穫できて保存もできる穀物(小麦、米、トウモロコシなど)」に依存するようになったのは
必然的なことと言えます。
しかしながら、穀物には、糖質はタップリ含まれていますが、
タンパク質や脂質が不足しています。
必須アミノ酸や必須脂肪酸が不足することで、免疫力が低下します。
そうなると病気に対する抵抗力も低下して、病気に感染る機会も増えて、
狩猟・採取時代より不健康になっていったと考えられます。
<人体の構成成分>
水分:60~70%
タンパク質:15~20%
脂肪:13~20%
ミネラル:5~6%
糖質:1%以下
人体の構成成分として、タンパク質と脂質はとても重要ですが、
糖質はなんと1%以下です。
そして必須脂肪酸と必須アミノ酸はありますが、必須糖質はないのです。
摂取糖質がゼロでも、肝臓や腎臓で、アミノ酸やグリセロールや乳酸から
ブドウ糖を産生するので、大丈夫なのです。
江部康二