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糖質制限食で気をつけることは?
【18/12/10 肉好き
糖質制限しています
江部先生。
尿糖が出てる、と健康診断でいわれました。
後日、ブドウ糖負荷試験の結果、2時間血糖値が208でした。

で、一ヶ月後の再検査でhba1c5.2、空腹時血糖値も90で問題なしと言うことで
貴方は糖尿病では無い、と、医師にいわれました。

江部先生、糖質制限食、続いて行きたいと思います。
何か気をつける事はありますか? 】



こんにちは。

肉好きさんから、
『糖質制限食実践において何か気をつける事はありますか?』
との、コメント・質問を頂きました。

まず、肉好きさんは、75g経口ブドウ糖負荷試験で、2時間値が208mg/dl
ですので、診断基準としては、糖尿病型です。

初回の検査では、糖尿病型ですが、
再検査では、HbA1c:5.2%、空腹時血糖値:90mg/dl
で、正常型です。

従って、現時点では、「糖尿病」と断定ではなく、
「糖尿病疑い」という診断となります。
再検査でも糖尿病型となれば、その時点で「糖尿病」の診断が確定します。

「再度、75g経口ブドウ糖負荷試験を実施する」とか
「普通に糖質ありの食事をして、食後2時間血糖値を測定する」とか
で、食後2時間値が200mg/dlを超えていれば
糖尿病の診断が確定します。

しかし、別に糖尿病の確定診断をつける必要はありません。
このまま、糖質制限食を続けていけば、
『空腹時血糖値』、『食後血糖値』もコントロール良好であり、
『平均血糖変動幅』も極めて小さく良好を維持できますので
合併症の心配も皆無であり、問題はありません。

糖質制限食で気をつけることについては、『糖質制限食十箇条』など
以下の記載を参考にして頂けば幸いです。


『糖質制限食十箇条』
-糖尿病や肥満が気になる人に-

一、 糖質の摂取を減らす。可能なら一回の食事の糖質量は20g以下とする。
二、 糖質制限した分、タンパク質や脂質が主成分の食品は充分量食べる。
三、やむを得ず主食(ご飯、パン、麺類など)を摂るときは少量とする。
四、水、番茶、麦茶、ほうじ茶などゼロカロリー飲料はOK。果汁・清涼飲料水はNG。
五、糖質含有量の少ない野菜・海草・茸類はOK。果物は少量にとどめる。
六、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。
七、マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。
八、お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)、糖質ゼロ発泡酒はOK。辛口ワインも適量OK。
醸造酒(ビール、日本酒、など)は控える。
九、間食やおつまみはチーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。菓子類、ドライフルーツはNG。
十、可能なら化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。

*糖尿病の人がやむを得ず糖質を摂取するときは、食直前に、「αGI剤」か「グリニド系薬剤」を内服すると、
食後高血糖がある程度防げる。
*牛乳は100mlくらいならOK。成分未調整豆乳は200mlくらいOK。
*肉と魚貝の摂取量は<1:1>が目安。
*経口糖尿病薬やインスリン注射をしている糖尿人は、必ず医師と相談してください。

『糖質制限食』の3パターン
一、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
  1回の食事の糖質量は20g以下。
二、スタンダード糖質制限食は、一日一回(朝か昼)少量の主食あり。夕食は主食抜き。
三、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。朝と昼は少量の主食あり。
  嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。


抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。

魚貝・肉・卵・豆腐・納豆・チーズなどタンパク質や脂質が主成分の食品はしっかり食べる。


糖質制限食実践後に好ましくない症状(力が入らない、しんどい、髪が抜ける、生理がとまる・・・など)が
出現した人のほとんどにおいて、実際にはカロリー不足が認められます。

☆糖質制限食はカロリー制限食ではありません。
摂取カロリーの目安は厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」です。
摂取エネルギーが足りていれば、好ましくない症状が出現することはほとんどありません。

☆糖質制限食実践者は、過度の塩分制限は必要ありません。
今まで通りの塩分摂取でOKです。過度の塩分制限でボーとしたり怠くなることがあります。

糖質制限食の理論的根拠
1、血糖値を直接上昇させるのは糖質だけで、たんぱく質・脂質は上昇させない。
2、糖質を摂取しなければ血糖値は上昇しない。
3、糖質制限食を実践すれば食後血糖値はほとんど上昇せず糖尿病は改善する。
4、食前・食後の血糖値血糖変動幅が少ないので生活習慣病の予防ができる。
5、食後血糖値の上昇が極めて少ないので、追加分泌インスリンも少量ですむ。
6、過剰なインスリンは肥満・がん・アルツハイマー病などのリスクとなるので、
 血糖コントロールができる限りで少量であるほど身体にはいい。
 

ということで、とてもシンプルです。
上記6つは、生理学的な事実やエビデンスがあることですので信頼度は高いです。

☆☆
なお本にも書きましたが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。
このため、既に経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服や
インスリン注射をしておられる糖尿人は
低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はないので、
以下の本などを参考にされて、
自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。

推奨著書
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ 新版」2014年(東洋経済新報社)
「なぜ糖質制限をすると糖尿病が良くなるのか」2015年(ナツメ社)
「糖質オフ!健康法」2016年3月(PHP研究所 )
「人類最強の糖質制限論」2016年4月(SB新書)
「増補新版食品別糖質量ハンドブック」2016年6月(洋泉社)
マンガでわかる「糖質オフ! 」健康法2016年12月、(PHP研究所 )
外食でやせる! 「糖質オフ」で食べても飲んでも太らない体を手に入れる、2017年(毎日新聞出版)
「江部康二の糖質制限革命」2017年(東洋経済新報社)
「男・50代からの糖質制限食」2018年10月(東洋経済新報社)


レシピ
「電子レンジで糖質オフの作りおき」 2016年10月(宝島社)
「やせぐせがつく糖質オフの作りおき 」2017年3月(宝島社)
「高雄病院の糖質制限作りおき 」2017年5月(洋泉社)
「作りおきおかずで簡単! 朝・昼・晩 糖質オフのダイエット献立」(家の光協会)2017年10月
「いくら食べても太らない! 旨い酒のつまみ」 (宝島社)2018年5月
「糖質オフのラクうまレシピ150」2018年7月(ナツメ社)
「女性のためのラクやせ糖質制限ハンドブック」2018年9月(洋泉社)
「男性のための糖質制限最強ダイエットハンドブック」2018年10月(洋泉社)


江部康二


糖質制限食で、「血糖・中性脂肪・膿瘍・肥満・高血圧」改善。
【18/10/21 ひのえうま

ありがとうございます
はじめまして。

先生のおかげで、主人が助かりましたので御礼申し上げます。
元々は掌に膿瘍ができて、週間も治らないため、
精密検査のために大きな病院に紹介されました。
そこで、糖尿病を指摘されました。
入院して掌の治療とともに、血糖コントロールをすることになりました。
既に、夜には40度の熱発を毎日起こすようになり、入院は決定的でしたが。
入院前の術前検査時6月27日時点での血液検査結果は

A1c 10.5
TG 603
γGTP 154
GLU 334

入院して、お決まりのカロリー制限食とインシュリン、そして手掌のための抗生物質投与。
それでも、少しは良くなったのですが、下がりきらないまま、
仕事のこともあり退院となりました。
2週間の入院期間中に、なぜか家にあった先生の本を読み、
退院後は実践あるのみ!でした。

9月18日に調べた結果
A1c 5.8
TG 310
γGTP 24
GLU117

と、見事に低下しています。
間、もちろん何度も調べていますが、右肩下がりで、全部を書くのは大変なので、
一番最近のものだけ比較のため書き込ませていただきました。
体重も10キロ落ち、(最高に太っていた時となら15キロ)血圧の薬、
アムロジピンも今は一錠、糖尿病はカナグルだけ1錠飲んでいますが、
そのうち要らなくなりそうと主治医から嬉しいお言葉がありました。
血糖値が高すぎて手掌膿瘍もよくならなかったのですが、血糖が落ち着いてからは、
抗生物質も効き、疼痛は残っているものの腫れは引き、
あとはゆっくりお付き合い中です。
まだCRPが、既定値より0.3ほど高いため、
糖尿病は元からついていた開業医に戻してもらえましたが、
整形的にはしばらく総合病院でお世話になりそうです。
開業医の主治医も、糖質制限に関しては、
糖尿病の治療の一つだからとおっしゃって下さって、
決して否定的ではなく協力的であるため、これからも続けていけそうです。
こんな短期間でこんなに効果が出るとは、本当に驚きです。
まだ糖尿病など何も言われていない時に、なぜ私が先生の本を買っていたのかは、
今もって全く謎ではありますが、あの本のおかげで、すごく勇気を頂きました。
その後、ハンドブックや、今回出た50代からの、も含めて数冊買い足し、
楽しく続けています。
新しく分かったことなどもあって、
常に進歩しているのだなあと勉強させて頂いています。
私も主人も50代で、ドンピシャなもので、余計一生懸命になりました。
一病息災とはよく言ったもので、
今回の入院で、健康を見直す良いきっかけになりました。
取り急ぎ、まとまっていませんがご報告と御礼まで。】


18/10/21 ドクター江部
Re: ありがとうございます
ひのえうま さん

拙著のご購入、ありがとうございます。
9月18日に調べた結果
A1c 5.8
TG 310
γGTP 24
GLU117

見事な改善です。
良かったです。
主治医が糖質制限食に協力的なのも、素晴らしいです。
中性脂肪値は、10時間以上絶食して、早朝空腹時で一度調べて見ましょう。


【18/10/22 ひのえうま

お返事ありがとうございます!
こんばんは!
お返事いただけるとは思っていませんでした!
お忙しい中、ありがとうございます(*≧∀≦*)
中性脂肪のこと、ちょうど、先生のブログを読んで勉強中でした。
とてもわかりやすく書いてくださっているので、夫にも説明しやすいです。
血液検査もここまで下がったら、3ヶ月ごとと言われたとのことなので、
次回は朝ごはんを抜いて、10時間絶食してから検査に挑んでもらいます!
そしてまた、ご報告させていただきます。
糖質制限に出会っていなかったら、と思うと今もまだ、
下がりきらない血糖値と格闘していたのだろうとゾッとします。
主婦の立場からですが、糖質制限のお料理は、やってみるとそんなに難しくないので、
実は以前よりものすごく楽です。(参考のためレシピ本も購入いたしました)
いいお肉、いいお野菜、いいお魚、と、素材の確かなものさえ選んでいれば、
調理方法はシンプルでも美味しいです。
しかも、糖質を足し算するだけなので、全然面倒くさくありません。
肉や魚は基本限りなくゼロに近いですしね。主婦には有難い方法です。
一緒に生活している私も、3キロは痩せました。しかも健康なんて嬉しい限りです。
これからも、沢山の発信を楽しみにしております。】


18/10/23 ドクター江部
Re: お返事ありがとうございます!
ひのえうま さん

糖質制限食で、ご夫婦共に、健康ライフを送って頂けば幸いです。


【18/12/09 ひのえうま
ご報告

こんにちは、江部先生。
またご報告に来させて頂きました。

6月27日
A1c 10.5
TG 603
γGTP 154
GLU 334

9月18日に調べた結果
A1c 5.8
TG 310
γGTP 24
GLU117

そして、12月3日に、健康診断で出た結果です。
A1c 5.9
TG 65
γGTP 20
GLU 107
TーCHO 172
HDL 69
TーH/H 1.5
HDL 69
LDL-CHO 93

他も全て、正常値内でした!しかも、ギリギリではなく、
若干余裕のある数値にビックリです。
健康診断ですので、江部先生が仰ったように、10時間以上空けましたら、
中性脂肪も上記の通りでした。
この結果を持って、主治医のところに参りましたところ、
カナグルを一度やめてみて様子を見ましょうということになりました。
あんなにたくさん飲んでいたお薬が、朝アムロジピン1粒だけになりました。
体重も順調に減り、165cm 65kgを切りましたので、血圧のお薬も、様子を見つつ、
やめる方で行きましょうと言われています。
最高に太っていたときは、83kgくらいあったので、その時からですと、18kg減ですね。
目で見える結果には、こちらもやる気が出ます。
ご飯もお弁当も、しっかり作って、維持していこうと思います。
重ね重ね、本当にありがとうございました。
今後の発信も楽しみにしております。】


ひのえうまさん
ご主人、見事な改善ですね。
ひのえうまさんも、3kg減量、
良かったです。

2018年6月の2週間の入院で、
手掌の膿瘍の熱が下がりきらなかったのは
当時は糖尿病のコントロールが悪かったのが原因と思います。
このとき、私の本が家にあったということですが
とてもラッキーだったと思います。
ひのえうまさんが、何故私の本を購入されていたのか、確かに謎ですが、
これも縁であり、直感ですかね。
そして即、糖質制限食を実践されたのも
勇気ある選択であり、素晴らしいです。
従来の糖尿病食とは、全く異なる『糖質制限食』ですから
ご夫婦で相談され、考慮され、決断されて、実践されたのだと思います。

「開業医の主治医も、糖質制限に関しては、
糖尿病の治療の一つだからとおっしゃって下さって、
決して否定的ではなく協力的」

これも、縁だと思いますが、ラッキーでした。
主治医が糖質制限賛成派か反対派かで、
患者さんのプレッシャーは全然違いますから、とても良かったです。
12月3日の健康診断では、
全てのデータが、余裕で基準値内なので、おおいに安心です。
18kgの減量成功および
カナグルも中止できて、たくさん飲んでいたお薬が、
朝アムロジピン1錠に減ったのも
素晴らしいです。
165cm、65kgなら、BMIは23.9と肥満脱却です。
このままスーパー糖質制限食で順調に経過すれば
主治医の仰るように、薬なしになりそうですね。

絶食10時間以上で、
空腹時の中性脂肪値が65mg/dlと80mg/dl以下、
HDLコレステロールが69mg/dlと60mg/dl以上、
なので、悪玉の『小粒子LDLコレステロール』もほぼ皆無で、OKです。

「主婦の立場からですが、糖質制限のお料理は、やってみるとそんなに難しくないので、
実は以前よりものすごく楽です。(参考のためレシピ本も購入いたしました)
いいお肉、いいお野菜、いいお魚、と、素材の確かなものさえ選んでいれば、
調理方法はシンプルでも美味しいです。
しかも、糖質を足し算するだけなので、全然面倒くさくありません。
肉や魚は基本限りなくゼロに近いですしね。主婦には有難い方法です。」


なるほど、そう言っていただくととても嬉しいです。

「糖質制限で、穀物も芋も駄目なら、食べるものがないので無理」
とか言って、尻込みして実践しないタイプもおられますので、
ひのえうまさんの行動力は、good job を達成です。
実際に糖質制限食を実践して、料理を作ってみれば
思ったより簡単で継続もしやすいようです。
要はやるかやらないかだけですね。

ひのえうまさん、
これからもご夫婦で、美味しく楽しく末長く糖質制限食で
健康ライフを送って下さいね。


江部康二
2型糖尿病の薬物による厳格な血糖管理の利益はわずか、 低血糖リスクに相殺される程度 。
おはようございます。

 少し前になりますが、
「2型糖尿病の薬物による厳格な血糖管理の利益はわずか、低血糖リスクに相殺される程度」
という驚くべき結論の論文が発表されました(*1)
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌(BMJ誌)2011年7月30日号の報告です。
1950年から2010年までに登録された多数の臨床試験の中から、
厳しい条件を満たした信頼度の極めて高い研究を13件ほど選出して、メタ解析したのが上記論文報告です。
メタ解析とは多数の研究の結果を統合して症例数を増やし、より俯瞰的な見地から分析することで信頼度を高める手法です。
 大変びっくりするような内容ですが、エビデンスレベルは最高ランクの論文です。
信頼度の極めて高い論文によって、2型糖尿病患者に対して厳格な血糖管理を行っても、
総死亡・心血管死亡リスクの改善効果はごくわずかで、重症低血糖リスクは2倍以上になることが、明らかとなりました。
さらに、厳格血糖管理群で、かえって死亡リスクが高まることも充分あり得るという、恐るべき結論です。

 そして、2008年の米国糖尿病学会で報告されたACCORD試験では、厳格管理群の総死亡率が標準治療群より有意に上昇し、物議をかもしたのは記憶に新しいところです。
コントロール良好になるほど総死亡率は減少すると考えられていたのに真逆だったわけで、これも衝撃の報告でした。
ACCORDは、米国とカナダの77施設の10251例による大規模臨床試験です。
2008年2月、厳格血糖管理群における総死亡率および心血管死亡率が、通常血糖管理群を有意に上回ることが確認され、
同試験は5年間の期間満了を待たずに平均追跡期間3.4年で緊急中止となりました。
 総死亡率が高まることが明確になった治療法群(厳格治療群)を、このまま予定の5年間まであと1.6年も続けることは、
倫理的に許されないということでの決断でした。
中止時の平均HbA1cは、厳格血糖管理群6.4%、通常血糖管理群7.5%でした。
今までの医学界の常識なら6.4%群のほうが7.5%群より当然、総死亡率は減少するはずなのに、
かえって増えてしまったわけで、研究者の戸惑いは想像に難くありません。
国際糖尿病連合によれば、HbA1cは6.5%未満が目標です。
ACCORD試験の結果はその後、ニューイングランドジャーナルに掲載されましたが、
やはりエビデンスレベルは極めて高い論文です(*2)

 さらに「2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い」という衝撃的な結論の研究報告が、
英国の医学雑誌ランセット誌2010年2月6日号に、発表されました(*3)
HbA1cが9%、10%のグループの死亡率が、7.5%のグループより高いことは容易に頷けますが、
6.5%のグループの死亡率も7.5%のグループより高かったことは、従来の常識では考えられないことであり、
ここでも世界の医学界は衝撃を受けました。
「今後の研究で確認されれば、ガイドラインのHbA1cを特定の値より下げすぎないよう指示する必要が出てくるだろう。」
との見解を著者らは述べています。この研究論文もエビデンスレベルは高いです。

 結局、北米と英国の大規模臨床試験において、HbA1c6.4%や6.5%と厳格に薬物治療すると、
HbA1c7.5%ていどのグループに比較して、かえって総死亡率および心血管死亡率が上昇するという、
同一のパラドックスが報告されたわけです。
 『血糖コントロール良好を目指してHbA1cを下げるべく厳格に薬物療法を行うとかえって総死亡率が上昇する』
という信頼度の高い研究報告が2つなされたわけですが、勿論これには理由があるはずです。

すなわち<糖質摂取+薬物療法>による血糖値の乱高下と頻回の低血糖が、死亡率上昇の大きな要因と考えられます。
普通に糖質を摂取して、厳格な血糖コントロールのために薬物を増量すれば、低血糖の頻度は必然的に増加します。
BMJ誌の「2型糖尿病の薬物による厳格な血糖管理の利益はわずか、低血糖リスクに相殺される程度」という結論も
また宜なるかなです。

こうなると、従来の糖尿病食(糖質たっぷり)を摂取しながら、インスリン注射や経口血糖降下薬などを内服している糖尿人は、
ある程度の合併症はやむをえず受け入れても総死亡率を減らすためには、
コントロール目標はHbA1c7.5%くらいを目指すのが最も安全ということができます。
厳格な薬物療法をやめれば、少なくとも低血糖リスクは減ります。

 日本の糖尿病患者のほとんどが、糖質を普通に食べているわけなので、
従来の日本糖尿病学会のHbA1cの目標値(7.0%未満)も考えなおして、
7.5%程度とするほうが、安全である可能性があります。

 勿論、糖質制限食実践中の糖尿病患者は、HbA1c6.2%未満をめざすのがよいと思います。
糖質制限食なら、薬物療法はないか、あっても必要最低限しか使用しません。
そうすると低血糖リスクはほとんどなくなり、血糖値の乱高下は生じず、合併症の心配もなく、
安全に血糖コントロールが可能です。
糖尿人のご同輩、くれぐれも、美味しく楽しく末長く、糖質制限食ですね。

(*1)
Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death,
and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ. 2011 Jul 26;343:d4169. doi: 10.1136/bmj.d4169.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21791495

(*2)
ACCORD
Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group, , Miller ME, Byington RP, Goff DC, Bigger JT, Buse JB, Cushman WC, Genuth S, Ismail-Beigi F, et al.: Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.

(*3)
The Lancet
VOLUME 375, ISSUE 9713, P481-489, FEBRUARY 06, 2010
Survival as a function of HbA1c in people with type 2 diabetes: a retrospective cohort study



江部康二
「糖質制限」が子供を救う、三島学著、江部康二監修、アマゾンOK。
こんばんは。

「糖質制限」が子供を救う
三島学/著 江部康二/監修
発行 一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会
発売 ㈱大垣書店
定価760円(税別) / 820円(税込)2016年11月


北九州市三島塾、三島学塾長のご著書です。

2016年11月の発売で、新刊ではありませんが、
日本で初めての、いやいや世界で初めての、「子供の糖質制限」の本です。
世界で初めての本ですから、大変な価値があります。

やっとアマゾンでも継続的に販売されるようになりました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4903954021/ref


楽天ブックスでもご購入頂けます。
https://books.rakuten.co.jp/rb/14600870/


出版にこぎつけるまで、とても苦労しています。
並大抵の苦労ではなくて、本当に大変でした。
苦労話に関しては、
以下の、青字部分の文章、私の前書きを、ご一読いただけば、大変嬉しいです。

興味が湧いた方は是非、ご購入いただけば幸いです。

本書は、大垣書店の店舗でもご購入頂けます。

■大垣書店: http://www.books-ogaki.co.jp/

最寄りの書店からのお取り寄せも可能です。

高雄病院売店
高雄病院京都駅前診療所
江部診療所
でも、購入可能です。



江部康二


糖質制限が子供を救う

前書き

「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」(東洋経済新報社)を日本初の糖質制限食の本として世に出したのが2005年です。

その後、糖質制限食はどんどん普及していき、2015年4月には東大病院でさえ緩やかな糖質制限食を提供する時代となりました。

そして今回の三島学さんの『「糖質制限」が子供を救う』は、日本で初めての子供の糖質制限の本です。

私が常々言っているように糖質制限食は人類本来の食事であり、人類の健康食ですので、大人は勿論のこと子供の健康にもおおいに役立つはずです。そのことを証明するため、子供の糖質制限に実績のある三島学さんに執筆をお願いしたのです。

実際、糖質制限食実践で、速やかに子供達の眠気がなくなり、多動がなくなり、集中力が増します。

結果、学力はどんどん向上して、偏差値も上昇、受験も成功です。そのような実例が本書には満載であり、読めば、まさに目から鱗が落ちると思います。

子供の糖質制限といえば、2013年8月31日(土)「日本糖質制限医療推進協会立ち上げ記念パーティーin大阪」での出来事を思い出します。

宴たけなわで、盛り上がっていた時に、私が、『「糖質制限」が子供を救うという本を、執筆中の、三島学塾長です。』と紹介したところ、大騒ぎになってしまったのです。50人の参加者で大盛況だったのですが、糖質制限賛成派の医師も、10名近くおられました。

その糖質セイゲニストの医師達のなかで、お二人ほど、「大人の糖質制限は大賛成だけど、子供の糖質制限はもっての外だ。」という立場の人がいて、大論争になってしまいました。

『「糖質制限」が子供を救う』という革命的なタイトルの本ですが、当時は自分で糖質制限をしている医師でさえも「子供にはNG」という立場の人もあり、子供の糖質制限には逆風だったのです。

その後、私自身が本を刊行している様々な出版社10社近くに声をかけたのですが、実に全滅でした。一社だけ、担当者は趣旨に賛成してくれたのですが、会社の全体会議で大反対されて、没となりました。ある程度、予測はしていたのですが、世間一般の常識からすると「子供の糖質制限」などとんでもないという認識だったのです。

ここに到って、私も覚悟を決めて、(一社)日本糖質制限医療推進協会から自費出版することにしました。幸い京都の大垣書店さんが、編集を引き受けて下さり、やっと日の目を見ることができました。

本書は、インターネット通販サイトや大垣書店の店舗でご購入頂けます。最寄りの書店からのお取り寄せも可能です。大変、価値のある画期的な内容の本ですので、私のブログでどんどん紹介したいと思います。

また夏井睦先生や宗田哲男先生などにもご協力頂き、ネットの情報網を総動員で世に広めようと思っています。

本書が眠気や集中力のなさや多動などのため、学力不足で困っている多くの子供達のお役に立てれば幸いです。

一般財団法人高雄病院 理事長
一般社団法人日本糖質制限医療推進協会 理事長
江部康二
肥満改善に対する糖質制限食の有効性・安全性は確立している。
こんばんは。

今日の記事は
肥満改善に対する糖質制限食の有効性・安全性に関するお話しです。
カロリー制限食によるダイエット法の限界についても言及します。

炭水化物を摂取して減量を目指すダイエット法は
現実には『カロリー制限食』になります。
カロリー制限食を開始して6ヶ月くらいまでは、体重は減少します。
しかしそこで、必ず減り止まります。
何故なら、カロリー制限食で半年経過すると
人体は、基礎代謝量を減らして、低エネルギー状態に適応していきます。
そして、カロリー制限食から元の摂取エネルギーに戻せば
リバウンドして、かえって体重は元より増加してしまいます。
つまり基礎代謝が減った分、太りやすい身体になってしまったわけです。
このように、理論的には、
「カロリー制限食で一旦減量できても必ずリバウンドする」
ことは明らかです。
無理に我慢してカロリー制限食を長期間続ければ、
筋力低下や骨粗鬆症のリスクとなります。

一方、糖質制限食は人類本来の食事であり、人類の健康食です。
厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」はしっかり確保して
糖質制限食を実践すれば、

A)太りすぎの人は、適正体重まで減量。
B)痩せすぎの人は、適正体重まで増加。

が、達成できます。
適正体重とは、BMIが20以上25未満で、
その人の体調が良い体重です。

減量を目指す場合も、ひもじい感や飢餓感は全くなしで、
筋力低下や骨粗鬆症リスクもなしで、
美味しく楽しく楽々と達成可能です。
もしも、カロリー制限で体重がやせ続けるなら、人体が消失してしまいます。
従って、人体は基礎代謝を減らして、低エネルギー状態に適応します。
その時点で体重減少が止まり、リバウンドが始まります。
体重減少が約半年で止まるのは、この理論以外には考えにくいです。

従って、カロリー制限食に全く意味が無いのではなく、
理論的に考えて、半年以上続けることの意味が極めて少ないということです。

上記理論の実例として信頼度の高いエビデンスであるDIRECTのお話しをしましょう。

DIRECT.jpg

よく引用されるイスラエルのShai先生の有名な論文、DIRECT
「低炭水化物食で体重減少・ HDL-C増加・HbA1c改善  RCT研究論文」

イスラエルの322人(男性86%)
(1)低脂肪食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
3グループの食事法を2年間
低炭水化物食が、最も体重減少。HDL-Cも増加。
36名の糖尿病患者においてHbA1cが有意差をもって改善


Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241


糖質制限群は、最初の2ヶ月は20g/日に糖質を制限、
その後3ヶ月目からは徐々に緩めて120g/日までOKと設定しています。

しかしながら、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後、
40~41%の糖質を摂取しています。

つまり、このDIRECT論文も、
糖質40%の糖質制限食群(中糖質群)と
糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)を比べた研究ということになります。

3群とも、出発点のベースラインからは、日々の摂取カロリーが、
6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後と全て、有意に減少しています。

ベースラインからのカロリー減少幅に3群で有意差はありませんでした。

糖質制限食群はカロリー制限なしの設定ですが、
低脂肪食群、地中海食群と有意差無く摂取エネルギーが減少しています。
つまり、DIRECTは
「同一カロリーの3群の体重減少効果を比較検討した研究」
ということになります。

糖質制限食群はカロリー制限なしの設定でしたが、
脂質・蛋白質が多く
満足度・満腹度が高いので
自然に我慢すること無く他の2群と同じだけのカロリーが減りました。
これは、かなり大きなメリットと言えます。


それで女性1500kcal、男性1800calのカロリー制限ありの他の2群に摂取カロリーを合わせてみると糖質制限食群でも、
女性で150g/日、男性で180g/日の炭水化物を摂取していることになります。

設定の120g/日をかなりオーバーしています。

これでは折角減少した体重もリバウンドを起こすでしょうね。

現実に2年後には、3群ともリバウンドを起こしています。

脂肪制限食が一番リバウンドが大きいです。
糖質制限食群も一番体重が減少していますが、
当初の5ヶ月間で達成した体重減少からは少しリバウンドしています。

この経過は、グラフをご参照ください。

私のようにスーパー糖質制限食実践中の場合、
一旦減少して適正になった体重はリバウンドを起こすことなく維持できます。

スーパー糖質制限食の場合は、
40~60g/日の糖質摂取量で、糖質の摂取比率は12%くらいです。

私の場合は、2002年にスーパー糖質制限食半年で10kg減量して、
167cm、57kgとなり、2018年12月現在も維持しています。

DIRECTの糖質摂取120g/日、糖質摂取比率40%は、
高雄病院のスーパー糖質制限食と比べると大きな差があります。

DIRECTによれば、40%の緩い糖質制限食でも、
「最も体重減少。HDL-Cも増加。HbA1cが有意差をもって改善。」
ということができます。(RCT研究論文2年間のエビデンスあり)

一方、スーパー糖質制限食に比べると、体重減少にリバウンドを生じています。

私は、やはり今後もずっと継続してスーパー糖質制限食を続けていきます。


DIRECT

Table2 炭水化物摂取比率
糖質制限群
ベースラインン:50.8%
6ヶ月後:41.4
12ヶ月後:41.6
24ヶ月後:40.4


地中海食群
ベースラインン:51.5%
6ヶ月後:49.8
12ヶ月後:50.0
24ヶ月後:50.2


低脂肪食群
ベースラインン:51.8%
6ヶ月後:50.4
12ヶ月後:50.5
24ヶ月後:50.7



江部康二