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産後うつ、貧血だとリスク6割増 気力低下が原因に。
こんにちは。

デジタル毎日 4月16日(火)
https://mainichi.jp/articles/20190416/k00/00m/040/146000c  に、
産後うつ、貧血だとリスク6割増 気力低下が原因に

という記事が載りました。
国立成育医療研究センターの研究報告です。

日本では、近年、赤ちゃんの死亡や妊産婦死亡は、
医療の発達や環境の整備で極めて少なくなりました。
江戸、明治のころとは雲泥の差があります。

例えば江戸時代の平均寿命は30~40歳と短いのですが、
生まれた子どもの半分以上が5歳までに死亡していたようです。
出産時の死亡や周産期の死亡、その後は感染症での死亡もあります。
また妊婦の出産時死亡もかなり多かったようです。

妊産婦死亡率は、1899(明治32)年の妊産婦10万人中409.8人から、
2016年には1899年の100分の1未満の3.4人まで減少しています。

妊産婦死亡報告事業(2010年~2016年に集積した事例の解析結果)
を見てみると、
2014年:40例
2015年:50例
2016年:44例

であり、原因別では、
産科危機的出血(22%)、脳出血(14%)、羊水塞栓(12%)、心・大血管疾患(10%)、
肺疾患(8%)、感染症(9%)、偶発・自殺(7%)、その他(9%)、不明(9%)
と記載されています。

これらの中で、ほとんどの疾患は妊娠・出産時の合併症であり、
予防することは困難と思われます。

その中で、自殺に関しては、予防可能です。
自殺の多くは、ベースにうつがあるので、積極的に治療することの意味は大きいです。
そして、今回の国立成育医療研究センターの研究報告により、
産後の貧血があるとうつを発症しやすいことが明らかとなりました。

産後の貧血は、ほぼ「鉄欠乏性貧血」と考えられます。
鉄欠乏性貧血なら、鉄剤の投与で簡明に治療可能であり、
貧血が治れば、うつの確率が減るのなら、
是非とも積極的に貧血治療を行う必要があります。

以下、デジタル毎日の記事から、要約しました。

https://mainichi.jp/articles/20190416/k00/00m/040/146000c
デジタル毎日 4月16日(火)
産後うつ、貧血だとリスク6割増 気力低下が原因に

国立成育医療研究センターで2011~13年にセンター内で出産した女性のうち、
妊娠の中期と後期、出産後に血液の検査データがあり、
産後1カ月時点でうつ病の有無を調べた記録が残る977人(平均36歳)が対象で、
調査が行われました。

その結果、貧血がある女性はない女性と比べると、産後にうつを発症するリスクが、
約6割も増えるとする結果が、報告されました。
貧血になると全身の倦怠(けんたい)感や疲れが取れにくくなり、
気力が低下するためと考えられています。

妊産婦死亡の原因疾患の中で自殺がありますが、うつ病が関与するとされており、
チームは「貧血治療で産後うつの発症を抑えられる可能性がある」と指摘しています。

貧血が認められたのは、
▽妊娠の中期で193人(19・8%)
▽後期で435人(44・5%)
▽産後1カ月で432人(44・2%)。
でした。

そして、産後にうつを発症したのは196人(20・1%)でした。
産後に貧血があった女性は、貧血がなかった女性と比べ
1・63倍も産後にうつを発症するリスクが高かったのです。
一方、妊娠の中・後期での貧血と産後うつとの関係は分かりませんでした。

さらに、産後に貧血が重症だと、うつを発症するリスクは1・92倍あり、
軽症でも1・61倍高く、
貧血が進むほど産後うつのリスクが高まる傾向にあることが明らかとなりました。

産後うつは社会的、精神的な要因が影響することも多いと思われますが、
調査した国立成育医療研究センターの小川浩平医師(産科)は
「客観的な指標となる血液検査でリスクを評価できる意義は大きい。
軽い貧血でも放置しないことが重要だ」
と話しています。】
イヌイットと高脂肪食(ω-3不飽和脂肪酸が主)への適応。人類と肉食。
【19/04/20 西村典彦
高タンパク、高脂肪食について

いつもありがとうございます。また、お知恵をお貸しください。
信憑性は分かりませんが、イヌイットの高タンパク、高脂肪食への適応について
AAASの以下の記事がありました。
https://www.eurekalert.org/pub_releases_ml/2015-09/aaft-_2091415.php

「脂肪代謝、身長、体重、コレステロールの制御に関わる多数の遺伝子が、
おそらく選択圧によって、
イヌイット集団をタンパク質と脂肪(特にω-3ポリ不飽和脂肪酸)を多く含む食事で生きられるようにしたことが判明した」


とあります。

遺伝子レベルで適応しているので可能と言うことであれば、
適応していない日本人を含む他の民族では高タンパク、高脂肪食は不適応であり
コレステロールの制御ができないと言う事にならないでしょうか。
これは、食餌中のコレステロールは血中コレステロールに影響しないと言う事と
矛盾しているように思えますが、いかがでしょうか。】



こんにちは。
西村典彦さんから、
『イヌイットと高脂肪食(ω-3不飽和脂肪酸が主)への適応』について、
コメント・質問を頂きました。
西村さん、情報をありがとうございます。

この記事の原著は、以下の緑文字のサイエンスの論文です。
Science. 2015 Sep 18;349(6254):1343-7. doi: 10.1126/science.aab2319.
Greenlandic Inuit show genetic signatures of diet and climate adaptation.(☆)


端的に言うと、
「イヌイットは、ω-3不飽和脂肪酸を大量に摂取してもいいように
遺伝的に変異して適応している。
従って、大量のω-3不飽和脂肪酸を、イヌイット以外の民族が摂取しても
意味があるかどうかわからない。」

という趣旨です。

つまり、「イヌイットは長期間、アザラシなどの海獣や魚を多く摂取していて、
それに含まれているω-3不飽和脂肪酸(EPA)が、
心血管系疾患を予防する効果があるので、心筋梗塞が極めて少ない。」

という今までの定説(EPAの心血管疾患予防効果)に対して、

このサイエンスの論文は、
イヌイットの特殊性(遺伝的に変異して、ω-3不飽和脂肪酸大量摂取に適応)
考慮する必要があるという仮説を提唱しています。
即ち、例えばEPAを沢山摂取あるいは内服しても、イヌイット以外の民族には意味がないかもしれないと
著者は述べています。
これはこれで、一つの見識であり仮説としては、あり得ます。

一方、すでにEPAは、日本でも健康保険に収載されていて、
脂質異常症閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感に対して適応がとれています。
健康保険に収載されているということは、日本人における研究において、
上記疾患に対して、EPAの有効性が確認されているということです。
従って、イヌイットのように、特殊な遺伝的変異を有していなくても
少なくとも日本人には、EPAは有効であると言えます。


最後に、人類全体の進化の歴史を考察してみます。
約700万年前にチンパンジーと分かれて以降、多くの人類が生まれては消えて
現在残っているのは、我々「ホモ・サピエンス」だけです。
最後に絶滅したネアンデルタール人は、
ヨーロッパを中心に13万年前から3万年前まで生存していました。

10万年前は、
ホモ・サピエンス、ネアンデルタール人、
デニソワ人、ホモ・フロレスエンシスが生存していました。

多くの人類が生まれては消えていきましたが、
脳が急速に大きくなったのはホモ・ハビリスやホモ・エレクトウスからです。
ホモ・ハビリスは、約200万年前に生存していて、
脳の容量は800ccくらいです。
ホモ・エレクトウスは、約190万年前に生存していて、
脳の容量がが950ccと大きくなっています。
700万年前に人類が誕生して、450万年間はは脳は大きくなりませんでした。

ちなみに、チンパンジーの脳容量は、350~400ccくらいです。
ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人・旧人)の脳容量は1600cc、
ホモ・サピエンス(現生人類)の脳容量は1500cc
です。

脳はエネルギーを多く使うので、
エネルギー効率の良い肉を多く食べるようになって脳が大きくなったと考えられます。
脳組織の50から60%は脂質が占めていますので、肉食による高タンパク・高脂肪食が
必要だったと考えられます。

従って、700万年間の人類の進化の歴史のなかで、
当初は植物食が主だったと思われますが、250万年前頃から、
動物性食品摂取が増えていき、ホモ・ハビリスもあるていど肉を食べていたと思われます。
190万年前のホモ・エレクトウス以降は、肉をしっかり食べて、
高タンパク・高脂肪食で、脳が大きく発達していったと考えられます。



江部康二


(☆)
Science. 2015 Sep 18;349(6254):1343-7. doi: 10.1126/science.aab2319.
Greenlandic Inuit show genetic signatures of diet and climate adaptation.

Fumagalli M1, Moltke I2, Grarup N3, Racimo F4, Bjerregaard P5, Jørgensen ME6, Korneliussen TS7, Gerbault P8, Skotte L2, Linneberg A9, Christensen C10, Brandslund I11, Jørgensen T12, Huerta-Sánchez E13, Schmidt EB14, Pedersen O3, Hansen T15, Albrechtsen A16, Nielsen R17.
Author information

Abstract
The indigenous people of Greenland, the Inuit, have lived for a long time in the extreme conditions of the Arctic, including low annual temperatures, and with a specialized diet rich in protein and fatty acids, particularly omega-3 polyunsaturated fatty acids (PUFAs). A scan of Inuit genomes for signatures of adaptation revealed signals at several loci, with the strongest signal located in a cluster of fatty acid desaturases that determine PUFA levels. The selected alleles are associated with multiple metabolic and anthropometric phenotypes and have large effect sizes for weight and height, with the effect on height replicated in Europeans. By analyzing membrane lipids, we found that the selected alleles modulate fatty acid composition, which may affect the regulation of growth hormones. Thus, the Inuit have genetic and physiological adaptations to a diet rich in PUFAs.

Copyright © 2015, American Association for the Advancement of Science.
『増補新版 食品別糖質量ハンドブック』が第12刷となりました。
こんにちは。

私が監修している
『増補新版 食品別糖質量ハンドブック』
https://www.amazon.co.jp/dp/4800309441/
ですが、
このたび12刷が決定致しました。
合計で9万7000部となります。
第12刷は、2019年4月19日刊行です。

『食品別糖質量ハンドブック』
は、18刷で、2016年3月、合計14万部を達成しました。
その後2016年6月に
『増補新版 食品別糖質量ハンドブック』が、上梓されました。

二つ併せて、累計23万7000部ですから、なかなかの快挙です。
安くて、便利で、持ち運びもできて、結構重宝な一冊と自負しています。


以下は、食品別糖質量ハンドブック増補新版の「はじめに」です。

はじめに

2012年11月に食品別糖質量ハンドブックを刊行しました。
おかげさまで読者の皆さんの大きな支持を得て
2016年2月には第18刷となり14万部の発行部数を達成しました。
この間2015年12月に日本食品標準成分表が改訂され、七訂となりました。
15年ぶりの大幅な改訂で項目が200増えて、
成分表のデータもかなりの変更がありました。
食品別糖質量ハンドブックもそれに完全に対応して、
この度、新版を出版することとなりました。
本書(新版)は、収録食品を大幅に見直すとともに
収録食品数を約1200と増やしました。
本書は身近な食品や料理の糖質量・たんぱく質量・カロリーなどが、
写真入りでひとめでわかるように工夫されています。
糖質制限食を指導する立場の医師・栄養士はもちろん、
糖質制限食実践中の方々にも強い味方となってくれると思います。

近年、糖質制限食は社会的に広く認識されるようになり、
糖尿病やメタボリック・シンドロームや肥満の患者さんだけでなく、
健康のために実践されている方も多いと思います。
農耕開始前、人類誕生後の700万年間は、
人類は狩猟・採集が生業で、穀物はほぼなしで糖質制限食でした。
即ち糖質制限食は人類本来の食事であり人類の健康食と言えます。
2013年10月に米国糖尿病学会が「栄養療法に関する声明」において、
地中海食やベジタリアン食や低脂質食などと共に
糖質制限食を正式に受容したのは大きな追い風となりました。

最後に糖質制限食を実践する際の注意事項をまとめておきます。
糖質制限食実践によりリアルタイムに血糖値が改善します。
このため既に、経口血糖降下剤の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、
減薬しないと低血糖の心配がありますので必ず主治医とご相談ください。
診断基準を満たす膵炎がある場合、肝硬変の場合、
そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
腎不全の患者さんも糖質制限食を実践されるときは、必ず医師とご相談ください。


江部康二
「糖質制限食」と「従来の糖尿病食」とEBMについて
【19/04/17 西村典彦
日本糖尿病学会のガイドラインについて
「糖尿病診療のエビデンス」能登 洋著 (58ページ)によると
「炭水化物50〜60%エネルギー、タンパク質20%エネルギー以下を目安とし残りを脂質とする」と言う日本糖尿病学会のガイドラインの根拠は炭水化物については血糖や脂質を評価したRCT主体のメタアナリシスに基づいていると記載されていますので、本当ならエビデンスレベルは高かそうです。
しかし、ガイドラインに従っても日本の糖尿病患者は減る気配はなく、私自身もそんなに炭水化物を食べれば血糖値をコントロールできなくなるのは経験上わかっています。
メタアナリシスに基づいているならばメタアナリシス自身に問題がある、もしくは目指すものが違う(合併症以外のファクター)と思われますが、どのような点に誤りやバイアスがあるのでしょうか。】


西村典彦 さん

「糖尿病診療のエビデンス」能登 洋著 は、2015年刊行ですね。
「糖尿病診療ガイドライン2016」の食事療法の部分、 37ページに
Q3-1 糖尿病における食事療法の意義と最適な栄養素のバランスは
どのようなものか?
に対し、
「摂取エネルギーのうち、炭水化物を50-60%、たんぱく質20%以下
を目安とし、残りを脂質とする。」
と記載しています。
しかし、推奨グレードの表示はなしです。
従って、エビデンスはないに等しいと思われます。
「糖尿病診療ガイドライン2016」は
2016/5/23刊行です。

能登先生、2018年には、
山田悟先生と一緒に、糖質制限食肯定の論文を書いておられます。


さて、
EBMが現在、医学界を席巻しています。

<EBMとは>

Evidence Based Medicine(証拠に基づく医学)を略してEBMと言います。
EBMだけに頼る医療には、明確に限界があります。
一方、EBMを無視する医療にも、明確に限界があります。
ともあれ今回の記事は、EBMについて考察してみます。

医学界において、evidence(エビデンス、証拠、根拠)となるのは、
基本的に医学雑誌に掲載された論文です。
ニューイングランド・ジャーナル、ランセット、米国医師会雑誌など、
定評ある医学専門誌に掲載された論文であることも、
evidence(エビデンス、証拠)の大きな要素となります。

その論文も
①無作為割り付け臨床試験(RCT)
②前向きコホート研究

の二つが信頼度の高いものとなります。
その論文も「糖尿病診療ガイドライン2016」によれば、

・レベル1+: 質の高いランダム化比較試験(RCT)およびそれらの
メタアナリシス(MA)/ システマティック・レビュー(SR)

・レベル1:それ以外のRCTおよびそれらのMA / SR

・レベル2:前向きコホート研究およびそれらのMA / SR 
     (事前に定めた)RCTサブ解析

・レベル3:非ランダム化比較試験 前後比較試験
      後ろ向きコホート研究
      ケースコントロール研究およびそれらのMA / SR
      RCT後付けサブ解析

・レベル4:横断研究 症例集積

*質の高いRCTとは
(1)多数例
(2)二重盲検、独立判定
(3)高追跡率
(4)ランダム割り付け法が明確

などをさす。 

といった順番で、信頼度に差をつけられています。
これを研究デザインのヒエラルキーと呼ぶそうです。
他にコンセンサスがありますが、コンセンサスは、
実証的研究に基づかない権威者の意見や合意なので、エビデンスとは言えません。
一般にエビデンスレベルが高い研究論文と言うときは、

(1) レベル1+ / レベル1
(2) レベル2

に基づく論文のことをさします。

症例報告も大切な医学研究の一つなのですが、
ことEBMというときは、「無作為割り付け臨床試験(RCT)」と「前向きコホート研究」
だけ考慮すればいいということです。

かつて、医学界では
実証的研究に基づかない権威者の意見や合意(コンセンサス)が幅を利かしていて、
学会発表などでも、有名大教授で権威者の先生が「私はこう思う」といったら、
水戸黄門の印籠みたいなもので「ヘヘー、恐れ入りました」という事で
一件落着という世界だったのです。

権威者が、何人か寄り集まって、ガイドラインの内容を決めると、
コンセンサスによる決定となります。
これは、上述のヒエラルキーからみると、エビデンスレベルは最低、
エビデンスなしということです。

権威者の意見や、コンセンサスに基づく見解などに頼っているのは、
非科学的であるという批判が、世界中の医学界で続出して、
それではよろしくないということで、
evidence based medhicine(証拠に基づく医学)→略してEBMが登場したわけです。

<従来の糖尿病食にはエビデンスがない>
前振りが長かったですが、
「糖尿病診療ガイドライン2016」の食事療法の部分、 37ページに

Q3-1 糖尿病における食事療法の意義と最適な栄養素のバランスは
どのようなものか?

に対し、

「摂取エネルギーのうち、炭水化物を50-60%、たんぱく質20%以下
を目安とし、残りを脂質とする。」


と記載しています。
しかし、推奨グレードの表示はなしです。
以前の、「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010」の食事療法、
31ページでは、「炭水化物は指示エネルギー量の50~60%」と、
グレードAで推奨してありますが、根拠はなんとコンセンサスで、
科学的根拠に基づいていないことが明示されていました。

2010年に比べれば2016年は、エビデンスのないことを
グレードAで推奨するという暴挙がなくなった分よしとしましょう。
ちなみに「2型糖尿病患者に運動療法は有効か?」に対しては、
血糖コントロールに有効で、推奨グレードAです。

結局、糖尿病の食事療法に関しては、
日本糖尿病学会が推奨する糖尿病食(カロリー制限高糖質食)には
エビデンスはないのです。

<糖質制限食にはエビデンスがある>

一方、ひいき目と言われるかもしれませんが
糖質制限食においては、一定のエビデンスがあります。
以下に、EBMとして信頼度の高い長期の研究を列挙します。
いずれも、糖質制限食の『長期的有効性・安全性』を保証する論文です。
なおこれらの論文は、スーパー糖質制限食に関するものではありません。
普通に食事をしている集団(糖質も食べている)において、
糖質を多く食べている群と比較的少ない群を比較したものです。
1年間の研究ならスーパー糖質制限食のRCTが少なくとも2つあります。

1)はRCT論文で8年間であり、信頼度はトップランクの研究です。
2)3)4)5)6)は前向きコホート研究であり、信頼度は上から二番目です。

糖質制限食の長期的安全性の肯定に関しては、
EBMに基づき少なくとも6つの信頼度の高い研究論文が存在するわけです。

例えば
2)は
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較です。
炭水化物摂取の多いグループは冠動脈疾患リスクが増加です。

4)は
糖質摂取比率51.5%のグループと糖質摂取比率72.7%のグループの比較です。
糖質摂取比率が一番少ない51.5%のグループは一番多い72.7%のグループに比較すると
心血管死のリスクが59%しかありません。

いずれも糖質大量摂取の弊害(心血管リスク)を如実に示しています。
結果として糖質摂取が少ないほど心血管リスク軽減において有利になることも示しています。

6)は2017年8月にランセットに発表されました。
「炭水化物の摂取比率が多いほど、総死亡率が上昇し
脂質の摂取比率が多いほど、雄死亡率が低下」
ですから、まさに夏井睦先生の言う「炭水化物が人類を滅ぼす」ですね。


長期の研究
1)RCT論文

低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT論文。
糖質50%未満のLCMD群と低脂肪群の比較。
女性は1800kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、
HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.

2)前向きコホート研究
低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし
一方総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。
高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。
ニューイングランドジャーナルのコホート研究  
82802人 20年間 2006年掲載 ハーバード大学
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較。
Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.

3)前向きコホート研究
21論文、約35万人をメタアナリシスして、
5~23年追跡して1.1万人の脳心血管イベントが発生。
飽和脂肪摂取量と脳心血管イベントハザード比を検証してみると、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことが判明。
Siri-Tarino, P.W., et al., Meta-analysis of prospective cohort studies evaluating the association of saturated fat with cardiovascular disease.  Am J Clin Nutr, 2010. 91(3): p. 535-46.

4)前向きコホート研究
「糖質制限食の安全性にエビデンス」
前向きコホート試験NIPPON DATA80 29年間 中村保幸
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、
59%しかないという素晴らしい結論で、糖質制限食の圧勝。
Br J Nutr 2014; 112: 916-924


5)前向きコホート研究

上海コホート研究
「糖質摂取量により4群に分けて、糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
11万7366人を対象に、調べた研究。
女性が6万4,854人で、平均追跡期間が9.8年。
男性が5万2,512人で、平均追跡期間が5.4年。

女性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量264g/日未満 ---------- 1.00
2、糖質摂取量264g~282g/日未満-------- 1.19
3、糖質摂取量282g~299g/日未満-------- 1.76
4、糖質摂取量299g/日以上 ----------- 2.41

男性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量296g/日未満 ------------ 1.00

2、糖質摂取量296g~319g/日未満 ---------- 1.50

3、糖質摂取量319g~339g/日未満 ---------- 2.22

4、糖質摂取量339g/日以上
Am J Epidemiol. 2013 Nov 15;178(10):1542-9.
Dietary carbohydrates, refined grains, glycemic load, and risk of coronary heart disease in Chinese adults.

6)前向きコホート研究
 『炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇』
ランセット誌のオンライン版(2017/8/29)で、
 カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan博士らが報告。
5大陸18カ国で全死亡および心血管疾患への食事の影響を検証した大規模疫学前向きコホート研究(Prospective Urban Rural Epidemiology:PURE)の結果。
2003年1月1日時点で35~70歳の13万5335例を登録し、
2013年3月31日まで中央値で7.4年間も追跡調査。
論文の内容を要約
1)炭水化物摂取量の多さは全死亡リスク上昇と関連。
2)総脂質および脂質の種類別の摂取は全死亡リスクの低下と関連。
3)総脂質および脂質の種類は、心血管疾患(CVD)、心筋梗塞、CVD死と関連しない。
4)飽和脂質は脳卒中と逆相関している。

炭水化物摂取比率    総死亡率
1群 46.4%          4.1%
2群 54.6%         4.2%
3群 60.8%         4.5%
4群 67.7%         4.9%
5群 77.2%         7.2%

脂肪の摂取比率     総死亡率
1群 10.6%         6.7%
2群 18.0%         5.1%
3群 24.2%         4.6%
4群 29.1%         4.3%
5群 35.3%         4.1%



<生理学的事実>
さらに、生理学的事実として、糖尿人が糖質を摂取した場合、
糖質制限食なら、食後高血糖は生じませんが、
従来の糖尿病食なら、食後高血糖が必ず生じるということは明白です。

そして、
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2007年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2011年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」


によれば、
食後高血糖は、
大血管合併症の独立した危険因子であり、
酸化ストレスを生じ血管内皮を障害し、
糖尿病網膜症と関係し、
IMT肥厚と関係し、
認知障害にも関係し、
癌発症リスク上昇と関連するとのことです。

糖質制限食により、食後高血糖を防ぐことの意味は、大変大きいと思います。


江部康二
DNA、遺伝子、ゲノム、染色体って何?
こんばんは。

ただいま朝日カルチャー湘南のPPTスライドを作成しています。
その中でチンパンジーとヒトは、約700万年前に分岐して、
「生物種としては、最も近縁である」というお話もしようと思っています。

そして、『チンパンジーとヒトのDNAは99%同一』と以前からスライドに記載していたのですが、
「あれ?ゲノムとDNAってどう違うんだっけ?」
「ついでに、遺伝子とか染色体とか、言葉はよく使うけど、正確な定義は?」
などという、原初の疑問が湧いてきて、フリーズしてしまいました。
医学部で絶対、学んだはずなのですが、
いつのまにやらアヤフヤ状態に陥っていました。(-_-;)

それで、心機一転、ネットで勉強し直しました。
読者の皆さんも、トリビアで役に立たない知識かもしれないけれど
知っていて損はないのでお付き合い頂けば幸いです。

いろいろ探して、
一番わかりやすいし他人にも説明しやすい解説のあるサイトを見つけました。

ということで、まずは音楽のカセットテープをイメージしてください。
未録音のテープが「DNA」です。
テープにすり込まれた曲情報が「遺伝子」です。
録音済みのテープが「ゲノム」です。


ここまでで、何となく全体像がつかめたことと思います。

DNAは、2重らせん構造の繊維です。
遺伝子は情報そのものです。
遺伝子情報が組み込まれたDNAがゲノムです。
ゲノムには、録音済みテープと同様に、情報がある部分とない部分が存在しています。

長いテープ(DNA)の中で、曲が録音された部分を「遺伝子」と呼びます。
そして、このテープの情報全部のことを「ゲノム」と呼びます。

DNAだけなら単なる構造物に過ぎませんので役に立ちませんが(未録音のテープ)
遺伝子という情報を組み込むことで(録音済みのテープ)、様々なタンパク質をつくることが可能となります。

それでは次に、染色体って何なん?ということになりますが、
「染色体」はカセットの役割を兼ねて、トータルして未録音カセットテープです。
DNAという2重らせんの繊維は、ヒストンというタンパク質に巻き付くことによって
安定した構造を確保していて、それを染色体と呼ぶのです。
生テープだと、構造的に不安定なので、カセットテープにして
安定化させているのと一緒の理屈ですね。


体は、タンパク質でできています。
遺伝子はタンパク質をつくる情報です。
どんなタンパク質をつくるか、という情報が遺伝子です。
DNAというひもの上に、遺伝子という「情報」が書かれています。
DNAは、ひもが2本、らせん状にからまっている形をした長い分子です。
<DNA=単なるらせんの紐2本>のことであり、
<ゲノム=DNA+遺伝子>です。

ここまで説明してきましたが、すなわち冒頭の
『チンパンジーとヒトのDNAは99%同一』というのは不正確であり
『チンパンジーとヒトのゲノムは99%同一』というのが正確ということになります。


ヒトのゲノムにおいて、
タンパク質の情報が書いてある部分はほんの一部とされています。
遺伝子情報が入っていない部分には、何が書かれているのか、
今もよくわかっていません。
なお、ヒトの「遺伝子」の数は、現在のところ約2万9千箇所とのことです。


今回の記事は理学博士の加藤牧菜先生の
以下の記事を参考にさせて頂きました。
ありがとうございました。

https://www.manabinoba.com/science/9304.html
内田洋行教育総合研究所
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江部康二